辞任した中山前国土交通相の失言の中で、日教組に関することもさりながら、筆者が最も気になったのは「成田空港の拡張が進まなかったのは、ゴネ得、戦後教育のせい」というくだり。▼「事務方から歴史的経緯について説明を受けた」後、撤回したが、「成田闘争」についてこれほどにも無知だったのだろうか。今なお続く反対運動は、新左翼が介入して混乱もしたが、「ゴネ得」という性格のものでは全くない。▼地元農民らの意向を無視して強権的に建設を進めたことが元凶となったことは政府自身も認め、村山政権時代に謝罪。国、反対派に学者をまじえた「円卓会議」という話し合いの場が設けられ、同空港はようやく今日の形にまでなった。これまでの努力を逆なでする発言に、最もあわてたのは国交省幹部だろう。▼大体、反対同盟の強力なリーダーだった故・戸村一作委員長は明治生まれ。自分に都合の良い論理を仕立て上げた中山氏こそが戦後教育世代というのは皮肉である。▼中山氏の東大・財務省後輩で「さらば財務省!」の著者、高橋洋一・東洋大教授は「東大出の官僚は頭は優秀なはずだが、年功序列による天下りシステムの中で努力しないので、無能になってゆく」と書いている。そういう官僚出の議員を大臣にしないこと。政治改革はその辺からだ。(E)