昨日、今日の2日間、今田町内で「丹波焼陶器まつり」が催されている。丹波焼の約800年の歴史において忘れてならない人物のひとりが柳宗悦だ。民衆が日々用いる工芸品の中に「美」を見出した柳によって丹波焼は高く評価され、広く知れ渡った。▼柳にとって、「美」とは「渋さ」のことだった。「美にはさまざまな相があろうとも、行き着くところは渋さにある」と説いた。渋さは、柳によると「最高の美」だが、工芸にとどまらず人間にも同じことが言える。▼若く、人として未熟なうちは「あいつは甘い」と言われ、人間が練られてくると「渋みが出てきた」と言われる。渋みのある人になるにはそれなりの年月と修練が必要だが、昨今は、甘いまま年を重ね、大人になりきれない人が増えた気がする。▼味覚も甘いものを好む傾向が強まったようで、ビールの苦みを嫌がり、甘みのあるアルコール飲料を求める若者が増えているとか。甘みを好むのと、人間が甘いのとは別問題だが、「酸いも甘いもかみわける」というように、人生経験は、甘みを求める味覚では駄目。▼柳が「丹波の古陶は、渋さの極み」とたたえ、「貧しさが人間をよくする場合と、丹波の焼き物が美しくなるのとは同じ原理が働いている」と言ったのは、そうした勘所を押さえたものだろう。 (Y)