氷柱

2009.01.29
丹波春秋

 野山に雪が残る日、わら葺き民家を訪ねると、大小さまざまなツララが軒にずらりと下がっていた。今ではあまり見なくなったツララの集団が懐かしく、しばし見とれた。▼言語学者の金田一春彦氏によると、ツララには多くの方言があるという。千葉方面ではチャラリン、福井や滋賀地方ではナンリョーなどといった具合。なぜ、ツララは方言が豊かなのか。それは「オモチャの少ない昔の子供にとって興味をひく対象だったから」らしい。▼そういえば、子供のころ、ツララが下がっていると、必ずポキリと折ったものだ。剣に見立てて遊んだりもした。ツララはいい遊び道具だった。▼冬には、キンカンという遊びもよくした。片手でつかめるほどの雪を、両手で強く握り締め、直径5センチほどの玉をつくる。土の上に置き、足の裏で雪の玉を転がしながら、土をかぶせる。次は雪の上で転がし、雪をかぶせる。土と雪を交互に繰り返し、直径15センチほどになると出来上がり。硬く締まった玉になっている。友達の作ったものとぶつけあい、先に砕けた方が負けになるという遊びだ。▼子供時代は、雪が降ると胸をときめかせたものだ。江戸時代の禅僧、鈴木正三の言葉を思い出す。「たとい雨降、雪降ともおもしろかるべし。童心の時には雪遊びをせしものと思い出すべし」。(Y)

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