シカ肉の料理を提供している「わらびの里青垣」。同施設を運営する鴻谷佳彦さんが考案したシカ肉料理は120種類に及ぶそうだ。開発に取り組み始めたきっかけは、近所に住むおばあさんだった。▼一昨年の秋、腰の曲がったおばあさんが一人で、畑に木の柵をこしらえていた。畑の白菜がシカにやられたとのこと。しかし、おばあさんの奮闘もむなしく、翌日になると、柵がシカに壊されていた。その光景に「シカ肉料理をつくろう」と発奮したという。▼とはいえ、その時点ではまだ『シカ肉は硬くてくさい』と信じ込んでいた。シカ肉料理を開発した鴻谷さんですらそうなのだから、一般の認識は言わずもがなだろう。▼シカ肉は低カロリー、低脂肪で高たんぱく。鉄分などのミネラルも豊富とヘルシーな食材だ。そんなシカ肉の食文化を発信していこうという動きが丹波市内にある。県も新年度から、シカ肉の有効利用に本腰を入れるという。それらの動きが成功するにはまず、『硬くてくさい』というイメージを払拭しなければいけない。▼あるレストランで聞いた話。お客の抵抗感を考え、シカ肉とは伝えずに出す。お客の反応は上々。食べた後に正体を知らされ、シカ肉に対する認識が改まるという。こんな出会いが広まることがシカ肉の食文化をつくっていく。 (Y)