柏原病院脳外科 入院受け入れ休止

2007.09.18
丹波の地域医療特集

 県立柏原病院 (酒井國安院長) は、 脳神経外科について、 10月1日から新規の入院患者の受け入れを休止する。 手術も休止する。 大学医局の人事で、 2人いる同科医師の1人が月末で、 もう1人が年内いっぱいで転勤となり、 後任医師の補充がないことによるもの。 残る1人で、 年内は外来診察を続ける。 同病院は、 丹波地域の頭部救急疾患治療の柱だった。 (足立智和)
 これまで受け入れていた、 脳卒中 (脳こうそく、、 脳出血、 くも膜下出血など)、 頭部外傷 (頭を強く打った時になる疾病の総称。 脳挫傷、 頭蓋骨骨折、 急性硬膜外血腫など) が受け入れられなくなる。
 救急でいったん受け入れた後でも、 脳外科対応の疾患と分かった場合は、 同じ神戸大医局系列の市立西脇、 三田市民の両病院を軸に搬送する。 救急車で搬送されず、 自力で外来診察に訪れた人でも、 入院が必要な重症患者は、 他の病院を紹介する。
 年内いっぱいは、 残る1人の医師が、 外来 (火、 水、 木、 金) と、 現在入院中の患者のケアを続ける。 年内に画像診断システムを活用し、 脳神経外科医がいる病院に、 柏原病院で撮影したCT画像を送り、 高度治療の必要制の有無を診断する体制の整備をめざす。 さらに、 院内で別の疾患で入院中に同科の治療が必要となった患者の転院がスムーズにできるよう、 受け皿となる病院との調整も行う。
 酒井院長は、 「脳血管の障害を持っている高齢者が多く、 患者も多い地域で、 脳神経外科の機能低下は、 非常に痛手。 申し訳ない気持ちでいっぱい」 と述べた。
 医師の引きあげは、 大学の同科医師集約化の方針によるもの。 医局を離れる医師の数が、 入局する医師数を上回り、 医局員が減っていること、 同科と関係が深い麻酔科と内科の医師が同病院で不足していることなどがネックとなり、 引きあげとなった。

 死因トップの脳血管疾患

 全国標準を 「100」 とする標準化死亡比で、 丹波市の脳血管疾患は、 男性127・1、 女性124・7 (ともに2000年) と、 全国より高い数値にある。 男性では、 がんや心疾患を抑え、 死因のトップだ。
 柏原病院の脳神経外科は昨年度、 入院で9072人 (延べ)、 外来で7443人 (外来) の患者を受け入れた。 篠山市の場合、 高度な治療を要する頭部救急疾患の多くは三田市民病院に搬送している。 影響をモロに受けるのが、 丹波市だ。
 同市消防本部によると、 今年1月から9月13日までに、 脳疾患 (重症、 軽症を問わない) で救急搬送された人は、 全救急搬送の13%を占める194人。 このうち、 約半数の98人を柏原病院が収容した。 98人の中には、 他病院で 「処置困難」 とされた重症患者を含んでいる。
 同市消防本部では、 収容先が遠くなることで、 搬送時間が長くなること、 また、 半数を受け入れていた柏原に頼れなくなるため、 収容先を探すのにも、 これまで以上に時間がかかると懸念している。 遠のいた収容先に傷病者を運ぶ分、 救急車が市内を留守にする時間が増加すると予想している。
 また、 脳の場合、 外から見ても症状の程度の見極めがつきにくく、 交通事故で頭を打った場合などは、 高度な医療機関へただちに搬送すべきなのか、 市内病院でCTを撮り、 病院に転院搬送の判断を仰ぐ方が良いのか、 判断に悩むケースが出てくるとみている。 医師が集約された病院には、 患者も集まることから、 救急時に、 近隣市の病院に収容が可能かどうかも、 その都度の救急隊と受け入れ病院の交渉にかかってくる。
 久下悟消防長は、 「脳疾患の場合は後遺症が残る場合があるので、 早い社会復帰のためには早期治療が必要。 一刻も早く収容するために全力を尽くす。 しかし、 不安はある。 救急現場は病院側の事情に大きく左右される」 と、 危機感を募らせている。

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