春日総合運動公園で行われたプロ野球の試合を見に行った。阪神や巨人など12球団が戦うプロ野球とは異なるもうひとつのプロ野球だ。関西独立リーグといい、12球団入りをめざす選手たちの育成の場としてこの春に開幕した。▼観戦した試合は、市島町出身の近藤琢磨さんが所属する明石レッドソルジャーズと、篠山市出身の酒井亮輔さんが所属する大阪ゴールドビリケーンズとの対戦。投手の酒井さんの出番はなかったが、近藤さんは2番ショートで出場し、華麗な守備をみせていた。▼2人の年俸は180万円。驚くほどに安いが、夢の追求と年棒の2つを天びんに掛けると、夢の追求が格段に重いのだろう。▼私たちは、働いて得るお金で生活の安定を手に入れようとする。さらには、所得を豊かにすることは幸福であるという図式を持ってしまいがちだ。お金で幸福は買えないと薄々思いながらも、ともすればこの図式に振り回されて、心をむしばむことがある。▼酒井さんは、入団に当たって両親から「人生は一度きり。挑戦してみたら」と背中を押されたという。そう、人生はただ一度。だからこそ、年棒よりも夢を追い求める道を選択した姿が潔く、すがすがしい。お金と幸福の図式に風穴を開けるかのような、グラウンドでのプレーがまぶしかった。 (Y)