「さんこ」という方言は、こちらに三つ、あちらに五つと散らばることをいう「三五(さんご)」から来ていると、4月30日付の本紙コラム「てぃーたいむ」にあった。この説は、かつて本紙に連載した「芦田輝夫先生の方言教室」に載ったもので、それが同コラムで取り上げられた。▼新聞が出てまもなく、読者の方から手紙をいただいた。「さんこ」の説について「小生は少し違った考えです」とある。▼手紙によると、さんことは、ちり籠を散らかしたような状態をいう「散籠(さんこ)」、あるいは「散供(さんく)」が転じたものでは、とある。散供とは、米や銭、花をまき散らして神仏に供えることだ。なるほどと感心すると同時に、方言の由来を探る面白さにも感じ入った。▼これからの季節に使われる方言「ほめく」の由来を知ったときも、はたと膝を打つ思いがした。先の芦田先生に教えてもらったのだが、火打ち石の火を移し取るものを火口(ほくち)というように、「ほ」とは「火」のことで、ほめくは「火めく」。だから、暑くて湿気が高いことを「ほめく」と言う。▼「さんこ」にしろ「ほめく」にしろ、共通語では表現できないニュアンスを含む方言にはその土地の文化や人々の気質が内蔵されている。方言の由来を探ることは、自分の住む土地を探ることでもある。 (Y)