今年初めに封切された映画「感染列島」は、強力なウイルス感染症のまん延で日本中にどんどん死者が広がるというストーリー。国際線の機内でも上映されていたが、あまりに生々しくて中止を決めたところもあるとか。▼この映画では、ウイルスの発生源は東南アジアのある島であることが突き止められ、その島ではエビ養殖のためにマングローブの森を伐採していた。藤竜也扮する研究者は「生きるために宿主まで殺してしまうウイルスと人間は似ている」とつぶやく。▼ペスト、天然痘、スペイン風邪と、人類を脅かしてきた感染症。近年、これだけ医療技術が進んだら駆逐出来そうなものだが、それは思い上がりに過ぎない。新しいワクチンで対抗しようとしても、ウイルスの方も生き残りをかけている。自ら変身し、勝負はいっこうにつかないというわけだ。▼今回の新型インフルエンザは幸いにも毒性が強くなく、映画のような惨事には至っていないが、安心は禁物。戦いは半永久的に続く。1世紀前、何千万人が死んだスペイン風邪のようなものの再来の可能性だって十分ある。▼今回の体験を十分学習しておくと共に、もっと根本的には、人類も「生きるために宿主を殺す」ようなことを厳に慎む。そのことをウイルス達に示すことが、大切なような気がする。 (E)