20世紀最大の民衆扇動家とされるヒトラーに、「デマを流すならば、できるだけ大きくせよ。それだけ人は信じるものである」という言葉がある。デマをうわさに置き換えると、「うわさは、その内容が大きければ大きいほど人は信じるものだ」となる。▼事柄が重要で、しかも不安や恐怖心をあおるようなうわさだと、人は信じやすくなるものだ。ここに状況のあいまいさが加わると、うわさはいっそう広まる。新型インフルエンザ騒動でのうわさは、その典型だった。▼新型インフルは、人々の関心が高く、不安をかりたてた。新型だけにその正体がよくわからず、状況もあいまいだった。感染の広がり具合の情報が正確につかめないでいた人たちには、状況はよりあいまいだったろう。あげく「丹波にも感染者がいるらしい」などのうわさが生まれ、流布した。▼ただ、うわさに対して真偽を冷静に見極め、疑わしいならば人に伝えないという態度があれば、うわさはそれほど広まらない。こうしたメカニズムをとらえ、社会心理学には、うわさの流布量に関して「事柄の重要性×状況のあいまいさ÷批判的感受性」という公式がある。▼新型インフルは、第二波が懸念されている。そうなれば、うわさがまたぞろ発生するだろう。今のうちに批判的感受性を養っておきたい。(Y)