豊岡の小児救急シンポで「守る会」発表

2008.06.19
丹波の地域医療特集

 小児救急を中心とした救急医療シンポジウム (豊岡市、 公立豊岡病院組合主催) が14日、 じばさんTAJIMA (豊岡市) で開かれ、 県立柏原病院の小児科を守る会の丹生裕子代表が、 会の取り組みを紹介した。 席上、 中貝宗治豊岡市長が、 同会が作成した冊子 「病院に行く、その前に」 を、 豊岡市で配布することを発表した。
 兵庫県の4分の1の面積を占める但馬の救急のとりで、 公立豊岡病院も、 小児患者のコンビニ受診などが原因で救急医療現場が疲弊しており、 住民の意識改革を促すことで、 但馬の救急医療の崩壊を未然に防ごうと、 守る会をパネリストに迎えた。
 丹生代表、 中貝市長、 倉橋卓男公立豊岡病院救命救急センター長ら5人がパネリストを務めた。
 丹生代表は、 守る会設立の経緯や3つのスローガン、 啓発資材を紹介。 コンビニ受診を控えようという呼びかけで、 柏原病院小児科の時間外の受診患者が最大で4分の1に減ったことを報告。 「親が知識を持つことで、 子どもを救える。 知識を持った賢い住民になろうと呼びかけている」 と話した。
 中貝市長は、 豊岡市でもコンビニ受診を控えようという啓発を始めているとし、 「豊岡でも冊子を作ろうと思ったが、 丹波のものが良くできている。 これを配布する」 と述べた。  
 倉橋センター長は、 「我々は人を助けたいと思っているが、 夜間救急に来た子どもが元気に走り回っているのを見ると、 ガックリくる。 24時間365日専門家が診れる訳ではない。 昼に受診するのが一番確実。 当直明けでそのまま働き、 その上で救急を診ているということが理解されていない」 と市民に理解を求めた。
 豊岡市消防本部の職員は、 フロアから昨年救急搬送した患者のうち、 入院が必要だった患者は高齢者の53%に対し、 乳幼児では12%にとどまったことを報告。 「安易に救急車が使われているのでは」 と警鐘を鳴らした。       (足立智和)

「柏原は日本一働きやすい」神大小児科の松尾教授
  

 豊岡市の救急医療シンポジウムで、 基調講演に立った松尾雅文神戸大学小児科学教授は、 「守る会は、 『コンビニ受診を控えよう』 と、 医師が思っていたことを口に出してくれた。 『お医者さんを守ろう』 と言ってくれた。 今、 県立柏原病院小児科は、 日本一働きやすい職場だ」 と評価した。
  「時間外患者のうち、 もっと早く対処すべきだったり、 明日でもいいというのが95%。 この95%が非常に問題で、 医師の離職につながる」 などと話し、 コンビニ受診が医師のやる気を削ぐことになると指摘。 「柏原病院は時間外の軽症患者が減る一方で、 入院患者は減っていない」 と、 住民の適切な受診で、 医師がやりがいを感じられる環境に変わったと紹介した。
  「守る会の活動は、 全国の小児科医に大きな衝撃を与えている」 とし、 この運動を全国に広めてほしいと、 全国の医師から声が相次いだことを明かし、 「住民の努力を評価したいし、 この運動が兵庫県だけでなく日本中に広がってほしい」 と述べた。

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