兵庫医科大・新家理事長に聞く「病院刷新の方針策定へ」

2008.08.12
丹波の地域医療特集

 10年間の存続が正式に決まった兵庫医科大学篠山病院。 地域医療を担う中核的な病院として新たなスタート地点に立った。 同医大の新家荘平 (しんか・そうへい) 理事長 (78) に今後の篠山病院改革などについて聞いた。 (聞き手は徳舛純)

 ―一時は撤退に傾きかけましたが、 最終的に篠山に残った理由は
 「厳しい医師不足の状況の中、 学内では教授会を中心に篠山病院を残すことに反対の意見が多かった。 しかし、 経営的に存続が可能な環境が整うのであれば、 社会の公器としての役割を果たさねばならないと考えた。 単純に言えば、 医科大学としての理念に基づいて理事会で存続を決定した」
 ―大学として篠山病院(篠山キャンパス)をどう活用していくのか
 「国は近年、 幅広い診療を行う総合診療や、 地域医療を重視し始めている。 専門性を備えながらも幅広く診られる医師、 オールラウンドの家庭医を増やしていこうという方向だ。 篠山病院ではこうした方針に沿った医療だけでなく、 その実践的な教育もできる」
  「教育・研究上の魅力を高めるため、 地域医療を主眼とした 『地域総合医療学講座』 を篠山キャンパス内に開設し、 12月1日までに篠山病院長に就任予定の福田能啓(よしひろ)臨床教授が、 この講座の教授になる。 講座は大学院にもつながり、 学位もとれる。 まとまった臨床研究ができ、 働く医師たちのモチベーションも向上する」
 ―篠山病院の課題は
  「篠山病院に現在勤めている医師たちは、 地域医療に対して強い使命感を持ち、 献身的な診療に励んでくれている。 しかし、 一般的に若い医師たちには都市部志向が強く、 遠隔の篠山での勤務は敬遠されがちである。 医師や看護師の確保が最大の課題だ。 篠山市との基本協定書に盛り込んだ診療内容を続けられるかどうかも、 医師がどれだけ確保できるかに尽きる」
 ―医師確保の方策は
  「篠山病院の医師や看護師らの処遇を可能な限り改善していく。 篠山市と県からの運営費補助は、 そのための財源に充てる。 病院施設や設備機器も更新し、 ハード面での医療環境も整備する。 女性医師や看護師が業務に専念できるよう、 市には保育所の設置をお願いしたいとも思っている」
  「これまで以上に安心して任せられ、 信頼される病院になるために、 大学病院の色に染まった組織や体制を変革するとともに、 全スタッフの意識改革を推進していく」
  「学内で先月、 『篠山病院再生委員会』 を立ち上げた。 委員長は経営企画室長の本院副院長で、 メンバーは教授や理事、 篠山病院の医師ら24人。 診療、 人事、 運営、 病院新築、 外交の5つの分科会に分かれ、 篠山病院をどう刷新していくかを論議、 具体的方針を策定していく。 そして、 市民にも医療従事者にも魅力のある病院に再生していく」
 ―他病院との連携は
  「これまで篠山病院は地域の医師会や医療機関との関係が希薄だった。 今後は連携を積極的に推進していく。 篠山病院単体で機能しにくい部分は、 県立柏原、 柏原赤十字、 三田市民や近隣の民間病院などと連携を取りながら対応していく」
  「具体的な機能分担はこれからの重要なテーマだが、 地域全体でできるだけ多くの診療科をカバー、 また24時間の診療ができれば一番いいと思う」
 ―最後に、 地域の住民に望むことは
  「広い意味での市民参加型の 『チーム医療』 に協力してほしい。 現代の医療は医師や看護師、 技師ら医療人だけでは成り立たない。 患者やその家族、 地域の住民全体の協力が必要だ。 医師は患者の身になって医療を考えるが、 逆に患者も医師の立場になって医療を考えてほしい。 県立柏原病院では、 小児科医を守ろうと母親達が時間外診療の自粛を呼びかけ、 コンビニ受診が減った。 医療に協力するスピリッツを市民も持ってほしい」

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