講談社文庫の今月の新刊 「小児救急」 (鈴木敦秋著、 743円) に、 県立柏原病院の小児科を守る会の物語が掲載されている。 守る会のメンバーや、 同病院小児科医ら約10人にインタビューした話を約60ページにわたって記載している。 2005年に同社から出版された本を文庫化するにあたって、 新たに書き加えた。
2人しかいない小児科医でありながら院長職を引き受けるにいたった酒井國安院長の葛藤や、 酒井氏が院長を引きうけることで負担が増え、 和久祥三医長が辞意を固めていくまでの苦悩、 守る会の母親たちが何を考え、 行動したかなど、 これまでほとんど語られることがなかった部分に踏み込んでいる。
同書は、 小児科勤務医だった夫を過労で亡くした母子、 マンパワー不足の夜間の小児救急体制のエアポケットにはまり、 子どもを亡くした夫婦、 結果的に誤診と引き継ぎミスで子どもを亡くした母親と、 異なる背景で肉親を亡くした家族と、 これらの問題を受けて解決をめざし格闘する小児科医の取り組みの記録。
著者の鈴木さんは、 長く医療記事を担当した読売新聞記者。 文庫化にあたり、 三家族が得た 「医療を変えるには、 患者と家族が向かい合わなければならない」 という認識を具現化した例として、 柏原病院小児科を取り巻く物語を取り上げた。