「地域住民と守る自治体病院」 と 「医療崩壊を防ぐには何をしたらよいか」 のテーマで、 22、 23の両日、 東京都内で開かれた医療関係者のセミナーに講師として参加した。 初日が全国自治体病院協議会の院長・幹部職員セミナー、 2日目が全国国民健康保険診療施設協議会の地域包括医療・ケア研修会。 2日間で、 全国の医療関係者約300人が参加した。 印象深かった点を報告する。 (足立智和)
初日は、 各地の住民団体が集合。 来丹したこともある千葉県立東金病院院長の平井愛山氏、 県立柏原病院の小児科を守る会の後輩グループ・市立西脇病院の小児科を守る会代表の村井さおりさんらとディスカッション。
平井院長は、 地域のNPO法人 「地域医療を育てる会」と連携し、若手医師のコミュニケーション能力を高める訓練をしたり、医療事故と報じられた全国の事例を検証する「医療の不確実性」を学ぶ講座を開いていることを紹介した。これは、丹波もマネできると思った。
西脇の守る会の取り組みでは、 企業に出かけ、 お昼休みに父親向けに小児医療講座を開くといった試みを興味深く聞いた。 講演内容とは違う面で西脇に驚いたのが、 市職員が随行していたことだ。 直前まで市長が同行を予定していたそうだ。 公立、 公的2病院を抱える丹波市と異なり、 西脇の場合、 市立病院に全力投球すればよいとはいえ、 医療を守るための官民の一体感は、 我々も見習わねばならない部分だろう。
2日目は政策研究大学院大学教授の島崎謙治氏らと4人で発表。 島崎氏の公立病院システムにおける問題の考察で、 日ごろ感じているモヤモヤが整理できた。 氏は 「責任と権限が開設者と病院長の間で分かれている」 ことを公立病院の一番大きな問題とした。 ▽ 「首長が公立病院の責任に無自覚」 な理由は、 すぐに政治問題化し、 なまじ関わると責任をとらされたり、 金を出す話になりかねないため▽ 「都道府県の無責任体制」 は、 公立病院に関わる部署が複数あり、 これらが別方向を向いていることによる▽ 「何度言っても、 体質は変わらないだろう」 と現場サイドにあきらめムードが漂っている―。 会場に居並ぶ頭が、 うんうんうなずいていて、 波打っているように見えた。
私自身は2日間通して、 「丹波では住民が頑張っているが出口が見えづらい。 頑張らない地域はいっそう厳しい。 住民協力は不可欠」 「行政の不作為が医療を壊す」 の2つの観点で話し、 「住民、医療者、 メディア、 行政、 議会が総力を集めなければ再生はない」 と強調した。
初日には広島県立病院の大濱絋三院長に、 「県の頭越しに直接応援はできないが、 応援している」 と市民の取り組みを激励して頂き、 邉見公雄同協議会長 (赤穂市民病院長) にも 「思った以上の勇気を頂いた。 全国に広げ、 点を線に、 線を面にしていきたい」 と言って頂いた。
2日目のコーディネーターを務めた諏訪中央病院名誉院長で、 同協議会地域医療・学術委員会委員長の鎌田實さんからは、 「守る会は、 あったかい活動だねえ。 ありがとう運動は素晴らしい」 との言葉を頂いた。
ヒントを得た参加者たちは、 各地で総力戦の準備を始めるだろう。 丹波が医療再生の成功例として今後も全国のトップランナーであり続けられるのか、 「他山の石」 とした他地域が再生に成功し、 丹波は置いていかれるのか。 「小児科を守る」 の先に進もう。