医療事故などが起こった際に第三者の立場で、 医療者と患者それぞれの話を聞き、 対話によって紛争解決をはかる 「医療メディエーション」 の入門講座が11日、 県立柏原病院で開かれ、 同病院の小児科を守る会 (丹生裕子代表) のメンバーが、 裁判以外の紛争の解決手段として注目を集めるメディエーションの概念について学んだ。
講師は、 大阪大学コミュニケーションデザインセンターの中西淑美さん。 以前から同会に関心があり、 手弁当で来丹した。
中西さんは、 「紛争自体を解決するのでなく、 2人を引き合わせ対話の場を作る人がメディエーター。 あれしろ、 これしろと言わず、 ただそこにいて対話の場を提供する存在」 「それぞれの話を聞いているうちに、 架け橋がかかる瞬間が来る。 それをコーディネートする」 と、 役割を説明。
また、 「分かり合えることはない、 異なることは美しいという前提に立っている」 と言い、 「溝を埋めるのではなく橋をかける」 と、 メディエーションの考え方を紹介した。
ワークショップでは、 参加者12人が6人ずつに分かれ、 全員が新聞紙 (1?分) の上に乗れるかどうかを試した。 片足ずつ足を新聞紙に置くなど譲り合い、 課題をクリア。 中西さんは、 「紛争の最中にいる人は、 こり固まっているので、 こういうやり方もある、 こういう考えもある、 と解きほぐしてあげる。 色んな方向から見て、 考えを広げることが大切」 と説いた。 また、 「争っている時は、 何が正しいのか分からなくなる。 自分で考える時間を与える。 待つ時間を持つことも重要」 と話した。
さらに、 「『なぜ』 の問いを、 あきらめずに続ける」 とし、 「怒る時は、 怒ることに集中しがちだが、 『なぜ、 自分はこんなに怒っているのか』 を考える。 なぜ、 相手は自分の気持ちが分からないのか。 それは、 相手が自分のことを知らないからではないか。 では、 相手は自分の何を知らないのか、 という具合に組み立てる。 逃げずに相手を知って」 と締めくくった。
メンバーらは、 「幅や深さが分からないと、 溝は埋められないが、 橋をかけるのであれば、 全体像が見えなくてもできる」 などと感想を話した。
民事訴訟では、 感情的しこりの解決につながらず、 時間もコストもかかるなどの問題があり、 近年、 対話で解決する方法が模索されている。