小児科を守る会の2年「感謝の手紙届ける使者」

2009.04.20
丹波の地域医療特集

  「このままでは小児科がなくなる」 「産科が休診になった」。 行政、 病院、 住民グループ、 連日のように全国からの悲鳴が、 事務局に届く。 「どんな取り組みをされたのか、 ぜひ聞かせてほしい」。 講演、 視察、 取材…昨年度だけで、 その数は100を越える。 講演は、 37カ所。 遠くは、 山形県新庄市、 広島市、 徳島県牟岐町。 丹生裕子代表 (38) は、 そのほとんどを日帰りでこなしている。 講演を医療再生の 「種まき」 と捉え、 「水と肥料、 太陽の光を注ぐのはみなさん。 芽が出ることを期待します」 と呼びかける。
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 講演会に 「ありがとうポスト」 を持参する。 用紙を配り、 帰り際に投函してもらう。 思いをしたためるという行動を通して、 会のスローガンの1つ 「感謝の気持ちを伝える」 を体験してもらっている。 靴の空き箱に用紙をはっただけの簡易な 「ポスト」 にたくさんの 「感謝」 が集まる。
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 丹生さんは、 壇上から呼びかける。 「小児科でなくてもいいですよ。 お世話になったお医者さんや看護師さんに書いて下さい。 会が郵便で届けます」。 かかりつけの医師や、 なかには20年ほど前の思い出を思い起こし、 「ありがとう」 のメッセージをしたためる人もいる。 投函されたメッセージを持ち帰り、 メンバーが手分けして台紙にはり、 インターネットで住所を調べ、 郵送する。 2月18日に奈良県橿原市で開かれた奈良県主催の医療シンポジウムで集まったメッセージは、 大学病院からまちの開業医まで、 20以上の医療機関に返送した。
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  「ありがとう」 が向かう先は、 県内にとどまらない。 里帰り出産した故郷の病院、 親や親せき、 友人を見舞った病院。 ありがとうの輪が、 どんどん広がる。 メッセージを受け取った医師からお礼のメールが返って来ることもある。 それが、 メンバーの励みになる。 平出智美さん (35) は言う。 「台紙にはって送ることなら、 子どもを育てながらでもできる。 小さなことだけど、 できることをコツコツ続けていきたい」。

 県立柏原病院の小児科を守る会が19日、 設立2周年を迎える。 0になるかもしれなかった県立柏原病院の小児科医は、 5人にまで増えた。 多くの地域で小児科の診療縮小、 休止が現実のものとなっており、 近隣でも三田市、 西脇市の市民病院が入院を休止中。 7月には、 八鹿病院 (養父市) が医師2人の退職に伴い、 小児科を休診する。 近くに入院できる病院がない 「空白地帯」 は、 県内でも広がっている。 同会は、 「全国の医療再生の希望の光」 と言われ目を集めているが、 活動実態は、 ほんの小さなもの。 「日本の医療を救う」 とまで言われる 「丹波のお母さん」 のささやかな試みを紹介する。

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