県立柏原病院の外科が、 胃、 大腸のがん患者に対し、 腹腔 (ふっくう) 鏡を使った手術を行っている。 開腹と違って、 傷が小さくて済み、 患者負担が少ないメリットがある。 「明石市の県立がんセンターや神戸に行かなくても、 同じ手術がここで受けられることを知ってほしい」 と話している。
へその周囲に、 直径1・5センチのカメラ (腹腔鏡) を入れ、 お腹にガスを入れてふくらませて空間をつくり、 カメラで映し出した映像を見ながら4本のかんし (0・5―1・2センチ) を入れ、 患部を切ったり、 焼いたり、 縫合したりする。
腹腔鏡を入れる所と、 かんしを入れる所の計5カ所を切るが、 最も大きい傷でも、 4―5センチほど。 手術時間は胃も腸も約4時間。 胃は、 早期がん、 大腸は進行がんにも手術の適応がある。
傷が少ないため、 手術後の胃や腸の働きの再開が早まり、 腸の開腹手術で2―3週間の入院期間が、 10日―2週間程度と短縮できる。
同病院では以前から同術式を用いているが、 昨秋、 県立がんセンターから手術経験豊富な中村毅副院長 (56)、 大野伯和部長 (51) が赴任したことで、 対応可能な領域が広がった。
同術式は1991年ごろから行われているが、 兵庫県は取り組みが遅れており、 がんセンターでも、 2006年に中村氏が胃、 大野氏が大腸で、 同術式を立ち上げるまでは開腹手術が行われていた。
中村副院長は、 県内でも少ない日本内視鏡外科学会の技術認定の資格を持つ。 一般的な学会の資格審査は、 実技はなく症例数などの書類と面接試験なのに対し、 同学会の技術認定は、 無編集の手術DVDが審査される。 指導的立場にある医師が受けるが、 胃の合格率は50%ほど。 大野部長も約40例執刀し、 がんセンターでは後進の指導に当たっていた。
中村副院長は、 「丹波地域は高齢者の進行がんが多い印象があり、 腹腔鏡の適応外となるケースも多い。 まちぐるみ健診の対象から外れる高齢者も胃と大腸のがん健診は受け、 早期発見してもらえれば、 腹腔鏡手術の対象になるし、 負担が少なくて済む」 と言い、 大野部長は、 「極端な専門性だけでなく、 幅広く一般外科もやっている。 医師不足で柏原病院は 『診ない』 イメージがあったかもしれないが、 院内の医者はがんばっているので相談してほしい」 と話している。
外科では乳がんや皮ふがんの手術も行っている。 乳がん手術では、 県立がんセンターから乳腺専門の医師を応援に招くなど、 「患者満足度の高い手術」 の提供につとめている。
問い合わせは、 同病院のがん相談支援センター (0795・72・0524)。