兵庫医大ささやま医療センターで心臓リハビリ

2010.07.14
丹波の地域医療特集

 心筋梗塞や狭心症などの心臓病で入院経験がある人を対象に、 適切な運動を行うことで心臓機能を高める 「心臓リハビリテーション」 が兵庫医科大学ささやま医療センター・リハビリテーションセンター (黒岡) で取り組まれている。 退院後の再発防止や、 死亡率の大幅な減少、 高血圧や糖尿病などの生活習慣病予防にも効果を発揮するとされるが、 国内での認知度はいまだ低く、 同センターが実施を呼びかけている状況。 果たしてその効果は、 取り組んでいる人の病状は―。 元気に汗を流して健康を目指す、心臓リハビリの現場を訪れた。
 カン、 カン、 カン―。 ピンポン球を打つ音が室内に鳴り響く。 利用者と理学療法士がラケットで球を打ち合う。 卓球のほか、 自転車こぎ、 ウォーキング、 柔軟体操―。 まるでスポーツジムかと思うようなメニューだが、 すべて心臓リハビリの一環。
 利用者は、 心筋梗塞、 狭心症、 心不全、 不整脈、 先天性の心臓病など、 心臓病を患った経験のある人ばかり。 傍らには心電図やAED (自動体外式除細動器) が置かれ、 心臓発作が起きた場合へ細心の注意を払いながらも、 笑顔で楽しく体を動かしている。
 心臓リハビリをする前に毎回心電図や医師の診察があり、 リハビリができる状態であるか、 チェックを受ける。 リハビリ中やリハビリ後にもチェックがあり、 心臓の状態を細かく診察。 また、 循環器科と連携して定期的に心臓の検査が行われ、 心臓機能が評価される。
 スポーツを楽しみながら、 医学的な診察を行い、 心臓の力を高めるのが心臓リハビリだ。
  「手足を骨折したり、 半身麻痺になると、 体の機能を取り戻すためにリハビリをする。 心臓リハビリもまったく同じ原理です」 と話すのは、 同大学の地域総合医療学助教で、 同センターリハビリテーション科の新井秀宜医師。 新井医師によると、 国内では認知度が低い心臓リハビリだが、 欧米では心臓病を患った人の多くが取り組んでいるという。
 アメリカの病院が実施した心筋梗塞患者の退院後の追跡調査では、 心臓リハビリに取り組んだ人は、 取り組まなかった人と比べ、 死亡率は56%減少、 再発率も28%減少したというデータもある。
 同センターでは、 心臓リハビリを丹波地域にも普及させようと、 昨年6月から始めた。 これまで同病院の循環器科を退院した患者ら約10人がリハビリに取り組んできた。
 週に2度、 それぞれの体力に合わせて組まれたリハビリメニューをこなしてきた利用者たちは、 現在、 心臓病による再入院はゼロ。 利用者の男性 (73) は、 「以前は少し動くだけで息が切れていたが、 リハビリに取り組んでからだいぶん楽になった」 と笑顔を見せる。
 県内で心臓リハビリを実施しているのはまだわずかで、 大半が神戸や尼崎など県南部に集中。 医療従事者にも心臓リハビリの概念が浸透していないことが認知度の上がらない原因とされる。
 新井医師は、 「高血圧や糖尿病、 メタボリックシンドロームなどの現代病が循環器系の病気を引き起こすことが多い。 高齢化になるにつれてこれらの病気も増え、 心臓病患者が減ることはないだろう。 心臓リハビリは薬を使わないので経済的で、 体を動かすので非常に健康的。 もっと心臓リハビリを知ってもらいたい」 と呼びかけている。
 同センターでの実施は、 毎週火、 木曜午前9時―午後0時。 問い合わせは、 同センター (079・552・7381)。

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