甘い話には裏がある

2009.08.10
丹波春秋

 イソップ物語の話―。のどがからからに渇いたヤギが井戸にやって来た。井戸をのぞくと、誤って井戸に落ち込んだキツネがいる。「その水はおいしいか」と尋ねたヤギに、キツネは「こんなにおいしい水はない」とほめまくる。ヤギは、水が飲みたい一心で井戸に飛び込んだ。▼悪知恵を働かしたキツネはまんまと井戸から脱出するものの、ヤギは井戸に取り残されるというのが、この物語の落ち。井戸から抜け出す方法に考えを巡らすことなく、水がほしいばっかりにキツネの甘い言葉に乗せられたヤギの浅はかさを戒めた物語とも読める。▼「気をつけよう、うまい話と甘い汁」「儲け話には裏がある」など、甘い話には安易に飛びつかないよう戒めたことわざがある。これは古今東西に通じる戒めのようで、「どんな美しいバラにも刺がある」は、5大陸すべての国にあるそうだ。それほど人は、甘い話に引っかかりやすいということの証左でもある。▼衆議院選挙に向けて各政党のマニフェストが出そろった。「うまい話」と評するのは失礼かもしれないが、本当に実現できるのかと疑いたくなるものもある。▼インドに、「猫はミルクを見て棒で打たれることを考えない」ということわざがある。おいしそうなミルクに飛びつき、あとで痛い目にあわないよう用心が肝心だ。 (Y)

関連記事