10日付の弊紙で「丹波地域は、自殺する人の割合が全国や県の平均に比べて高い」とあった。悩ましい問題である。▼ひきこもりやうつ病の若者と交流のある哲学者、中島義道氏は、自殺願望のある若者に語りかける。「君が死んだら、ぼくは悲しい。だから、君は死んではいけないのだ」。なぜ自殺してはいけないのか。その答えは分からない。ただ、ひとつ分かっているのは、あなたの死は私を悲しませるということだ。▼『悩む力』の著者、姜尚中(カンサンジュン)氏も同様のことを書いている。「単純に『死んではいけない』と私には言えない。でも、『人とのつながり方を考えてほしい』とは言いたい」。人とのつながりの中にある自分という存在を自覚することが、生きる力となり、自殺を抑止する力にもなるという。▼周囲とつながりがあり、周囲を悲しませるから、自殺を思いとどまる。それは事実だろう。しかし、半面の事実でもある。周囲とつながりがあるがゆえに、人は死を選ぶこともある。自分がいるため、周囲の者を悲しませている。巻き添えにしている。「自分さえいなければ」。そう認識したとき、人は自殺の扉に一歩近づくのではないか。少なくとも私の肉親の自殺はそうだった。▼自殺に至るプロセスはさまざまで、一概にくくれない。それもまた悩ましい。(Y)