貴重な「埋もれ木」で盆製作 北海道の木地師・府川さん 作家仲間との縁が形に

2023.04.04
地域

作品が並ぶ「岩茶房丹波ことり」の店内で、埋もれ木を使った盆を手にする府川さん=兵庫県丹波篠山市西新町で

ろくろを使って木工作品を作る職人、木地師の府川晃さん(75)=北海道伊達市=が、創業約140年の「小谷木材店」(兵庫県丹波篠山市北新町)で長年眠っていた貴重なケヤキの「埋もれ木」で盆を製作した。丹波篠山に住む旧知の作家仲間との縁がつながり、形となった。府川さんは「何か運命的なものを感じる」と感慨深い表情を浮かべていた。

中国の高級茶・岩茶が飲める店「岩茶房丹波ことり」(同市西新町)で3年ぶりに開いた個展に合わせて製作した。「埋もれ木」は、地殻変動や火山活動などで地中に埋まり、約1000年かけて炭化して化石のようになったもの。色は黒寄りだが、光の加減によっては茶や赤、銅のようにも見える。塗装はせず、素材本来の色、木目の模様を生かした。ケヤキの埋もれ木を使った盆約10点を展示販売した。

「神秘的で、太古のロマンを感じるこの木に、どう命を与えるかが命題だった。作家として、たかだか50年は活動しているが、ここまで切断する際に硬く、手ごわい木材はなかった」と言う。

このほか、樹脂が多く、耐久性に優れたスギなどを使った盆も製作。どの作品もシンプルながら、色合いや木目に個性があり、日常に取り入れやすいという。個展では丹波篠山市内や北海道で仕入れた木材を使い、盆を中心に約180点を並べた。

50年ほど前、陶芸家の故・生田和孝さんの窯元に足を運んだのがきっかけで、丹波篠山と縁ができた。生田さんに師事した柴田雅章さん(74)=丹波篠山市鷲尾=との親交が深まり、今では「親友以上の仲」(府川さん)。ジャンルは違えども、作家として互いに切磋琢磨してきた。

今回の個展会場となった「ことり」を営むのは柴田さんの娘、小谷咲美さん(40)。約20年前の開店当初から府川さんの盆を使っている。客から「どこで買えるのか」と聞かれることも多く、咲美さんが府川さんに”ラブコール”を送り、2020年に同店では初めての個展を開いた。

その際、咲美さんの夫の真巳さん(63)が営む小谷木材店を来訪。倉庫の中で、木目が見えないぐらい真っ黒で、ほこりだらけの一枚の板を見つけた。引き付けられた府川さんが木を削ると、「他の木とまるで違う、別格なきれいな色が出てきた」。貴重な埋もれ木と確信し、他の目にとまった木材と一緒にトラックに積み込み北海道に持ち帰った。

咲美さんによると、埋もれ木は、真巳さんの祖父の代から眠っていたもので、「当時は今と比べて木材に価値がある時代だった。良い木を見つけ、店の“財産”として買っていたのかも」と推察する。

同店では20日ごろまで、府川さんの作品の一部を展示販売している。

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