NHKの大河ドラマ「龍馬伝」にいよいよ勝海舟が登場するようだ。坂本龍馬が「日本第一の人物」とたたえ、心服した海舟。スケールの大きな傑人であることは言うまでもないが、俗世に生きる我々凡人も『海舟もそうだったか』と、ほほえんでしまうような言葉を残している。▼「人間の元気を減らすのに一番力のあるものは、内輪の世話や心配だ」という言葉だ。家庭の外部で起きた問題は、ぐっとこらえたり、逆に奮起することができたりするもの。しかし、「親兄弟とか内部の世話には、みんな元気をなくしてしまうものだ」と、海舟。▼家庭の心配事は志気を失わせる。これは、さすがの海舟も凡人と同様だったようだ。実際にそんな経験もあったのだろう。傑人にとっても家庭の心配事が急所になっていたとは、何とも親近感を抱かせる。▼もし海舟が現代にタイムスリップしたなら、と想像したくなる言葉も残している。「世間では、ときどき西郷や大久保がいたらとか言うが、生きていたとしても、今では老いぼれ爺だ」という言葉だ。▼昔と違って今は、閉塞状況を打ち破る能力を持った人材が不足しているという世間の失望感に対して、海舟は一喝し「人材は今でも、どこにでもいる」と説く。海舟が今の政界を見たとしたら、やはりそう言うのだろうか。 (Y)