1939年(昭和14)8月、植物学者の牧野富太郎博士が植物採集会を行った兵庫県丹波市氷上町香良の「独鈷の滝」周辺でこのほど、シダ植物を観察する会(青垣いきものふれあいの里主催)が開かれた。丹波自然友の会(梅垣守明代表)の例会を兼ねて開かれ、30人ほどが参加。県立人と自然の博物館の鈴木武研究員(61)が講師を務め、岩盤などにシダ植物を見つけては、特徴などの詳しい説明を受けた。
牧野は、NHK連続テレビドラマ小説「らんまん」の主人公のモデル。39年、県中等学校博物学会の植物採集会があり、牧野の指導で丹波地域などの教員らが学んだ。シダ植物観察会は例年開いているが、牧野が調査したのと同じ場所を歩くことで、牧野ら一行に思いをはせた。
鈴木研究員は、シシランやヤブソテツ、イワガネソウなど、見つけたシダ植物をペンライトで照らしながら、生態や分布などを詳しく紹介。スタートから50メートル進むのに1時間ほどかかる熱の入りようで、参加者も熱心に耳を傾けた。
牧野と同博物学会は植物採集会の際、独鈷の滝のそばにある浅山不動尊で集合写真を撮っており、今に伝わっている。自然友の会も同じ場所・構図で記念写真を撮影した。
梅垣代表(69)=同市柏原町=は「牧野さんと同じ場所で植物を採集し、縁を感じる。良い機会を得て感激している」とにっこり。鈴木研究員は「当時の写真を見ると、多くの人が集合写真に写り込んでおり、熱心だったことが分かる。今回の参加者も多く、脈々と熱意が受け継がれていることを感じる」と話していた。