伝統の「バトン」どうつなぐ
日本酒「小鼓」で知られ、1849年創業の老舗酒蔵「西山酒造場」(丹波市市島町中竹田)の女将。同酒蔵の経理や人事、広報、経営戦略まで広く担う。同酒蔵内の木造蔵を再生し、酒造り文化や発酵食を味わえる施設「鼓傳」を近くオープン予定。「明治時代から続く酒造りや発酵について外の人に知ってもらい、生き証人の一員になっていただきたい」と力を込める。
大阪府堺市出身。銀行員、看護師を経て、同酒蔵6代目の周三さんと結婚した。来丹後、酒蔵の倉庫に残る在庫の山を見て、手間暇をかける酒造りの魅力に多くの人たちが気づけていないことにジレンマを覚え、経営に携わるようになった。
2014年8月、丹波市を襲った豪雨で、同酒蔵内に大量の泥が流入し、1メートルを超える高さまで堆積した。廃業すら覚悟したが、連日10人以上の地元住民らがボランティアで泥かきをしてくれて、1カ月半後には営業を再開できた。被災を機に、「『西山酒造場の役割は何か』と考えるようになった」。「人を呼び込めば地域が盛り上がり、経済も回る。地域に恩返しを」と、社員一丸で、固定概念に捉われない酒造りに取り組んだ。
以前から「かっこいい」と感じていた母屋は直売所に改装。リキュールや甘酒ヨーグルトなど、女性向け商品も開発した。出荷前には杜氏だけでなく、全社員で利き酒をし、味を見極める。
若者の日本酒離れも進む中、「企業としての在り方を変えなければ生き残れない」と危機感を口にする。「目指すところは、世界中の人がおいしいと思える酒を造ること。私は継いでいる立場。次にどうバトンをつないでいけるかを考えたい」。48歳。