吉本隆明という思想家がいる。一時代を画した思想家だが、娘で作家のよしもとばなな氏の方が一般によく知られているだろう。そのばなな氏の子ども時代、吉本氏はよく公園に連れて行ったという。それは吉本氏のひそかな自慢だったが、子どもたちは快く思っていなかったらしい。▼ばなな氏らが大きくなって、「公園で遊ばせてくれたっていうけどさ、遊んでもらった覚えはないよ」とやりこめられたという。自分はベンチで本を読み、子どもたちを自由に遊ばせていた吉本氏。▼当時は『それでいい』と思っていたのだが、大きくなった子どもからそうではなかったことを聞かされ、「相当ショックだった」と吐露している。「ああいうときは自分も一緒に手足を使って、滑り台でも何でもいいから一緒になって遊んでやった方がよかったんだなと、反省した」。▼吉本氏は、少年少女期は、遊ぶことが生活のすべてである時期だという。ただ、吉本氏の遊びの解釈は広く、本を読むのも遊び、勉強するのも遊びとすべきだという。読書も勉強も楽しく取り組んだらいい、ということだろう。▼夏休みが始まった。吉本氏のアドバイスに従うなら、読書感想文も自由研究も楽しくやればいい。そして、吉本氏のように反省しないですむように、親子で遊べばいい。 (Y)