「丹波新聞鳥部」って? 活動きっかけはコロナ禍 名称はヤフコメから誕生

2024.05.16
注目

冬の寒さに対応するためモフモフに膨らんだスズメ。スズメは鳥部で最多登場=兵庫県丹波篠山市内で

10日から16日は、身近な野鳥を大切にし、守っていこうという思いが込められた「愛鳥週間」です。兵庫県丹波篠山市と丹波市を発行エリアにしている丹波新聞社では、「丹波新聞鳥部」として普段から鳥の話題をお届けしています。「年中愛鳥週間」でもある鳥部担当記者は、どのような思いで日々、鳥と向かい合っているのか。思いをつづります。

スズメにツバメ、サギ、ジョウビタキ、イソヒヨドリ―。鳥部では珍鳥を撮影するというよりも、身近に暮らし、日々の暮らしの中で出会うことができる鳥たちの姿を撮影してきました。

実は、この活動の始まりは「コロナ禍」です。

私たちは日々、地域の話題を読者の皆さんに届けていますが、コロナ禍が始まったことで、さまざまな行事が中止になり、「季節感」を伝えることが難しくなりました。

緊急事態宣言や感染情報、地域医療の状況など、コロナにまつわる暗い話題が紙面を埋めるようになり、作っている側も見ていてつらくなるような新聞になっていきました。

「コロナ禍にあっても楽しい話題をお届けしたい」と考えましたが、人が集まらないということは、「ネタ」が枯渇するということです。これは記者にとってかなり苦しい状況でした。それでも、余白だらけの白い紙面は発行できません。そこで、とにかくカメラを持ち、あてもなく屋外へ出ました。

 私たちが日々、活動している兵庫県丹波地域は、大阪や神戸などの都市部から車や電車で1時間と少しの距離ですが、豊かな自然が残されています。丹波新聞のほとんどの社員がそこで生まれ育っているため、屋外に出ても〝当たり前の光景〟が広がっているだけでした。

しかし、野辺をぶらぶらと歩いているうちに気が付いた、いや、再認識したのです。野に咲く美しい花、鮮やかな木々の緑、そして、空を舞う鳥たち―。人間の活動は止まっていても、自然が季節を伝えてくれているということに。それこそ、〝当たり前〟のことだったのですが。

そうして、季節感を伝えてくれる花や動植物にレンズを向け始めました。もともとそれらの知識があったわけではありません。ただただ、「きれいやな」「おもしろいな」と感じた名も知らぬ対象の写真を撮り、図鑑やネットで調べては記事にしていきました。

特にこれまでも視界に入っていたにもかかわらず、気が付いていなかった鳥たちの種類の多さや、行動にはとても興味を抱きました。

冬の寒さに対応するため、モフモフに膨らんだスズメやモズ。田を耕すトラクターの後ろに続々と集まるサギたち。元気に翼を広げて日本に戻ってきたツバメ。動物園に行かずとも、こんなにも魅力的な生き物が身近にいたなんて。それらを上手に撮影できた瞬間の喜びは、記者にとっても新たな発見でした。

そんな鳥関連の記事を紙面だけでなく、ネットニュースにも配信したところ、意外にも多くの反響が寄せられました。

 しばらくして、わが社にとっては大きな〝事件〟が起きます。あまりに鳥ばかり配信していたためか、ヤフーニュースのコメント欄で、「鳥部」と命名して頂き、同じ名で呼んで頂く方が増えていったのです。

以降、「丹波新聞鳥部」を名乗らせてもらうようになりました。一方的に記事を配信しているのではなく、読者の方と双方向でやりとりできたことには感動さえ覚えています。

ちなみに部というと、「部署」のように思われがちです。実際、大きな新聞社には記者部門の中にも社会部や運動部、経済部、写真部、科学部などさまざまな部署がありますが、小さな丹波新聞(営業、製作、総務、印刷、編集合わせて25人)の記者部門は編集部のみですので、鳥部という部署ができたわけではなく、あくまで記者の活動の一つ、いわば「部活」のようなものです。

メインの担当者は野鳥写真を撮り始めてまだ数年、知識ゼロからスタートした普通の記者。豊富な自然の知識と卓越した写真の腕を持つ先輩がサポートしてくれるのが救いですが、カメラの技術も高価な超望遠レンズもありません。プロの野鳥写真家の方からすれば、鼻で笑われるような出来栄えでしょう。

それでも、時に癒しを、時に自然について考えるきっかけを与えてくれる鳥たち、そして、記者と読者の皆さんをつないでくれた鳥たちのことを、さらに多くの皆さんに知ってもらいたいと、日々、野山の中で上手な写真と文章に頭を悩ませています。

鳥部の活動で何より楽しいのは、皆さんが記事に寄せてくださるコメントの数々です。皆さんの鳥愛あふれるコメントは、見ているだけでにんまりしてしまいます。コメント欄だけでなく、発行エリア外、全国津々浦々の皆さんが送ってくださる本社へのメールもとても励みになっています。

 ネットニュースというと、どうしても、「コメント欄=炎上」が結びついてしまいますし、情報を発信しているメディア側としては「恐怖の場」でもあるのですが、おかげ様で鳥部については勝手ながら「ヤフコメ民」の皆さんとも良好な関係を築かせて頂いているのではないかと感じています。

10日からスタートした愛鳥週間。全国の新聞社がいつも以上に鳥たちのニュースを配信してくださっています。どれも「さすが!」「うわー!すごい!」と思わせられる写真ばかりで、自分の写真を見返しては恥ずかしく思っています。

しかし、「負けてられん!」と頬を張り、今後もカメラを持って野に出ます。皆さんとともに鳥たちを愛でるために。そして、鳥たちがこれからも元気に羽ばたける環境を考えていくために。

まだまだ発展途上、至らない点も多々あると思いますが、どうぞ、今後ともよろしくお願いいたします。

【丹波新聞鳥部】(※コメント欄より、弊社の活動を命名していただきました)

※鳥部員より追記 たくさん応援コメントを寄せていただき、誠にありがとうございました。とても励みになりました。命名してくださった方の最初の「命名コメント」は、今もスクショで大切に保存しています。  小さな新聞社の小さな取り組みですが、これからも皆様との「呼吸」を楽しみながら、がんばって続けてまいりたいと思っております。調子に乗って「鳥部カレンダー」を出そうかと企んでおります。  改めまして、今後ともよろしくお願いいたします。

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