「物置を片付けたいが人手がない」「買い物を手伝ってほしい」「墓掃除をお願いしたい」。こんな依頼が丹波市シルバー人材センターに寄せられていると、先日の本紙(丹波市版)にあった。▼記事によると、そうした依頼の背景には、高齢者夫婦や単身高齢者の世帯が増えていることがあり、センターは「高齢者らの困り事の駆け込み寺」としての役割が増しているという。家族の変容を映し出した事象だと思った。▼今も核家族化が言われるが、核家族とは「夫婦だけ、あるいは夫婦と子どもだけの家族」であり、現実には核家族よりも進んで家族の原子化が進行している。一人きりの世帯が増えるなど、家族の構成員がさらに減っており、今後も原子化は進むだろう。▼とりわけ原子化した高齢者をどう支えるかは考えるべき問題であり、思想家の内田樹(たつる)氏は、その対応として親密なネットワークの構築を呼びかけている。「地縁的なものであれ、血縁の共同体であれ、複数の人間で構成される相互扶助組織を持たないといけない」(『下流志向』)。▼先の記事によると、シルバー人材センターのスタッフは、依頼主の高齢者とのふれあいを喜び、依頼主の感謝にやりがいを感じているという。センターは、相互扶助組織として機能しているのかもしれない。(Y)