当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は、兵庫県丹波篠山市後川(しつかわ)上の春日神社です。
昼なお暗い木立の中の参道を進み、こけむした石垣の上に築かれた長床(舞殿)をくぐると、荘厳な構えを見せる社殿と対面する。雨乞いをする龍神信仰と結びつき、「龍神春日社」とも呼ばれており、開運・招福を求めて龍ゆかりの寺社を巡る昨今のブームの影響から、同神社にも都市部からの参拝者が増えているという。インターネット上でも複数のブロガーやユーチューバーから紹介されるなど、”静かな”注目を集めている。
氏子は、後川上ノ西、後川上ノ東、後川新田篭坊の3自治会。「講親」と呼ぶ年当番の5人が毎月、掃除をし、夏・秋には祭りを営んで大事に守っている。
由緒によると、後川は丹波で最も古い荘園で、748年、東大寺領に。その後、藤原氏領でもあったので、その氏神「春日大社」の分霊を1233年に勧請したものと考えられる。最初は原谷に祭られたが、参拝に不便だったため、1247年に後川上・中それぞれに移された。
長床は、横約14メートル、奥行き約6メートル、天井高さ約3メートルと立派で、一昔前まで芝居が行われ、村人たちの娯楽の一つになっていたという。現在は1月の神社役員交代の引き継ぎや、9月の数珠繰りの神事の場として使われている。
宮総代代表の倉康隆さん(71)は、「高齢化率が5割を越える村で、老朽化が進む建物の維持管理をどのようにしていくかが大きな課題」と話している。