通過儀礼

2010.12.18
丹波春秋

 近年、神社の本殿で結婚式を挙げるカップルが増えてきたと、弊紙丹波市版に載っていた。結婚式のちょっとした変化であるが、昔と比べて婚姻儀礼が大きく変わった点がある。それは、家が会場でなくなったことだ。▼民俗学者の八木透氏が京都府長岡京市で行った調査によると、婚姻儀礼は、古くはすべて家で行われ、宗教的な色彩はなく、濃い親族だけを招く簡素なものだった。昭和30年以前は、いわゆる結婚式を行わない例が半数以上みられたという。▼やがて神社や結婚式場などで神式かキリスト教式の結婚式を行い、引き続いて披露宴を行うスタイルに変わった。披露宴の招待客も昭和40年ごろから、それまでの近隣の人たちに替わって勤め先の上司や友人が中心になったそうだ。▼婚姻の儀礼は、人の一生の上での大きな節目であり、いわゆる通過儀礼の一つだ。主な通過儀礼としてこのほかに、子どもの誕生をめぐる儀礼、葬送儀礼があるが、こうして並べてみたとき、気づくことがある。それは、家が通過儀礼の場でなくなったことだ。▼子どもの誕生は以前から病院に移っている。農村部でも葬送の場は近年、葬儀会館へと移りつつある。通過儀礼の場が家から離れて外部に移り、地域とのかかわりも薄れる。この功罪はあるのだろうか。気になる。(Y)

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