2011.02.16
丹波春秋

 左手薬指骨折から3カ月半。治療が一段落した今なお、関節を屈伸させるリハビリに通院しながら、ふだん滅多に思わなかった指のことが色々気になる。▼薬を煎じるのに使った薬指を、中国では漢方の国なのに「薬指」とは呼ばず、何と「無名指」と言うそうだ。「中指」は日本語と同じ、人差し指は肉を食べるのに使ったとかで「食指」と言うのに比べ、ひどい冷遇だ。英語でも「サード(3番目の=親指以外で)フィンガー」と素っ気なく、あえて気取ると、指輪をはめる「リングフィンガー」。▼日本語では薬指を「紅さし指」とも言ったが、今は死語同然。包帯を巻いていた時、たまたま行った祇園の姉さんに尋ねたら、きょとんとしていた。ともあれ日本人の器用さ、表現力の豊かさは大したものだ。▼指の3つの関節は「第1」「第2」「第3」と呼ぶと思っていたら、これは俗説らしい。医師に聞くと、手のひらに近い方から「基節」「中節」「末節」の3つの骨があり、筆者は末節と中節をつなぐ「遠位指節間関節」部を粉砕骨折した。▼「枝葉末節」という言葉もあるように、辞書には「末節」とは「重要でない、些細な事柄」としか書かれていない。しかし、とんでもない。末節と言えども極めて大切。人体の部位に末節的なものは何もないと、ようくわかった。(E)

 

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