兵庫県丹波篠山市住吉台の老人クラブ「住吉台シニアクラブ」の会員増強を図ろうと、同クラブ会長の渡辺剛夫さん(81)が、同クラブの取り組みなどを紹介したPR動画を制作し、動画共有サイト「ユーチューブ」で公開している。活動内容のほか、住吉台の沿革や街並み、市内の名所なども併せて解説・紹介している。渡辺さんは、「心豊かな老後を送るには、『遠くの親戚より近くの他人』。『一人の時間も大切だが、ときには仲間と一緒に過ごすのも良いものだ』。ユーチューブを観た人がそんな気持ちになり、入会してもらえるきっかけになれば」と期待している。
タイトルは「シニアになったらシニアクラブを楽しもう!」(13分)。クラブの同好会活動▽歌声サロン▽グラウンドゴルフ▽モルック▽囲碁ボール―を笑顔いっぱいで楽しんでいる会員の様子や、にぎやかな日帰りバス旅行の模様を紹介。毎月、機関紙「シニアクラブ通信」を発行していることも伝えている。
住吉台の沿革を解説するシーンもあり、1971年、区画数1100、人口5000人の計画でニュータウン開発が始まるも硬い岩盤層にぶち当たり、工事は難航。開発業者が倒産し、工事が一時中断したこともあったが、10年の歳月をかけて完成したという波乱の出だしだったことを振り返っている。
渡辺さんは現役時代、パソコンに触る機会が多く、自身の仕事で使うホームページを作った経験もあることから“八十の手習い”でユーチューブ動画制作に挑戦。構成、撮影、編集といった全ての工程を1人で行い、3カ月かけてアップロードにこぎ着けた。
住吉台シニアクラブは通称で、正式名称は「丹波篠山市老人クラブ連合会丹南支部第9福寿会」。「老人クラブ」というワードが入会しづらい一因になっていると考え、十数年前から通称で活動している。
民生委員・児童委員も務めている渡辺さんは、住民の高齢化、一人暮らし世帯の増加を目の当たりにしている。「個人情報保護の観点もあって、住民が亡くなっても自治会内の人すら知らないこともしばしば」と、つながりの希薄化に危機感を抱いている。
老人クラブが住民同士の関係性を深められる場所の一つと捉え、入会を勧めてみるものの、「高齢になっても働く人が多く、組織に縛られたくないなどの理由で入会されない人が増えている」と渡辺さん。昨年12月現在、住吉台には約2800人が暮らし、うち65歳以上が約1000人。高齢化率は36%に上るが、会員数は80人で、対象者の1割にも満たない状況という。
今後も動画制作の仲間を募りながら、自治会内の特定の住民をピックアップして紹介したり、丹南支部のPR動画を作ったりする構想を描いている。