当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は、兵庫県丹波篠山市春日江のカヤの古木です。
春日江の県道脇で、車の通行を邪魔するかのように道路にはみ出す格好で鎮座しているカヤ(イチイ科の常緑針葉樹)の古木。樹高約20メートル、幹周りは約4・3メートル。ほうきを逆さにしたような樹形をしており、幾本もの枝を空に向けて広げているが、主幹は地上から4メートルほどの所で折れてしまっている。樹齢は不明だが、地域住民からは「600年」との声も聞かれる。
公民館の敷地内に生えている。そこは、もともとは東に約100メートルの山裾に移された熊按(くまあん)神社があった場所で、当時は御神木として祭られていたという。
現在も集落のシンボルとして大切に保存されているが、車の往来が多い道路に面しているため、あまり良い環境とは言えないようだ。南側から眺めると健康的な幹肌を保っているが、北側に回り込むと幹の内部が空洞になっている様子が見てとれる。
樹勢の衰えを心配した自治会は2017年、樹木医に治療を依頼。周囲をアスファルトで固められてしまったことで水不足に陥り、根が衰弱していると診断され、土壌改良を行うとともに、自動灌水システムを設置するなどして、根を活性させる治療が施された。
山内泰三自治会長(68)は、「幼い頃は、このカヤの実を拾い集めて食べた思い出がある」と懐かしみ、「長きにわたり春日江の歴史を見てきた地域の宝。代々、住民たちはこの木を眺めて暮らしてきたので愛着もひとしお。これからも末永く村を見守ってほしい」と願っている。