クラゲ

2012.07.26
丹波春秋

 クラゲは漢字で「海月」または「水母」と書く。白川静「字通」によると「海舌(かいぜつ)」とも言うらしい。歳時記には「鰹の烏帽子(えぼし)」ともあり、皆言い得て妙だ。▼小学生の時、盆も近い頃に天橋立へ一家で海水浴に行ったら、クラゲにいっぱい刺され、とても漬かってはおれなかった。早々に引き揚げる羽目となり恨めしく思ったことを、今でも橋立へ行くたびに思い出す。▼関電大飯原発がフル稼働に入る直前、大量のクラゲが発生して出力が低下する事件があった。しかるべく処理をしてすんだが、立ち会った牧野経産副大臣が「クラゲごときに邪魔をされてたまるか」とテレビで発言していたのは、うなずけなかった。▼神戸に住む筆者の知人は、阪神大震災の1週間前、自宅の近くの森から異常に多くの鳥が一斉に飛び立つのを目撃し、「きっと何かある」と周囲に言って回った。しかし誰からも相手にされず、ならば自分だけでもと非常用リュックを寝室に置いていたお蔭で発生時、家族は無事に避難できたという。▼クラゲの大量発生が天変地異につながるとは言わない。さりながら、原発の安全を言うのならば、自然界のちょっとした事象にも耳目を傾ける鋭敏さと謙虚さを持たなければいけないのでは。海に還す水母の傷は海が医(いや)す 津田清子(E)

 

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