自然離れ

2012.08.25
丹波春秋

 篠山市出身の北村昌美・山形大学名誉教授が亡くなられた。北村氏の専門は森林文化論。兵庫丹波の森協会主催の「丹波の森大学」でしばしば講義をされ、学ぶことが多かった。▼明治時代になって、西洋から自然科学が入ってきて日本人の自然離れが起きたという。その傾向は特に戦後、顕著となり、自然は「現実の自然」と「観念の自然」の二つに分かれた。観念の自然は、頭の中だけの自然で、現実の自然はマムシにかまれ、ハチに刺されもするありのままの自然をいう。▼観念の自然のみが発達し、現実の自然を直視しないため、「自然を大事にしよう」という掛け声は高まるものの、現実問題として自然破壊が進んだ。現実に自然と接触し、自然を育てている農林業者への理解は低く、山が荒れた。▼林業の現状と将来を憂えられた北村氏は、国家としての経済的支援の必要性を訴え、そのためには日本人の旧来の自然観を取り戻すことだと言われた。自然との一体感を持ち、自然を自分と同等のものと見て、共存の道を歩んできた自然観だ。▼こうした自然観は今も私たちの意識の下部層にあり、それを掘り起こせば、森林に対する理解が深まり、林業問題の解決が探れると、北村氏は期待された。氏の逝去を悼むと共に、氏の遺志を無にしてはならないと思う。(Y)

 

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