それぞれの教訓

2013.06.22
丹波春秋

 三陸ツアーの途中、石巻市の大川小学校のそばを通った。新北上川の河口付近。ここは児童100人のうち70人が先生10人と共に津波にのまれた。月命日の11日、校庭に建てられた母子像の前で大勢の人が線香や花束を供えていた。すぐ裏手に山が迫り、海水塩で枯れた杉が立ち並ぶ。▼何故そちらに避難せず、緊急時のマニュアル通りとは言え川向こうの避難所に向かったのか。先生たちは協議を重ねた結果、「急斜面で滑り易い」山を背にしてマニュアルに従った。結局、列の後方にいて山へ方向転換した先生とごく一部の児童のみが助かったという。▼翌々日訪れた陸前高田市で、残った一本松の見える、やはり河口の気仙中学校に案内された。ここでも川の上手の避難所に逃れるマニュアルだったが、校長が「これはただならぬ地震。ひょっとすると避難所も危ない(事実その通りに)」と咄嗟に判断。生徒らを裏手の国道脇の高台に誘導したが、それでも安心できないと、さらに国道を横切ってもう一段高い山中まで。こうして全員が無事だった。▼南三陸町でも、海岸から1キロほどの小学校で、先生たちがたまたま津波の前日に避難経路を実地に歩いて調べていて、学校奥の神社を避難場所に決定。事なきを得た。▼後になってそれぞれ教訓となる話ながら、渦中に決断するのは…。(E)

 

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