神社の壁に無数の穴 忍び寄る“キツツキ”被害 各地で謎の行動、研究者が警鐘


無数の穴が開いた覆屋の壁面=兵庫県丹波篠山市後川上で

 兵庫県丹波篠山市後川上の春日神社の社殿の板壁に、直径6―7センチほどの穴が無数に開いている。県立人と自然の博物館(同県三田市)の動物生態学者、布野隆之研究員によると、穴を開けたのはアカゲラなど「キツツキ類」の可能性が高く、同神社の穴は最近開けられたものではないものの、同様の現象が今、全国各地の廃校や別荘など、人の活動が少ない建物で生じているという。布野研究員は、「家屋という人の財産に直接的に損害を与えているだけに深刻な問題」と指摘し、「別荘地である信州地方での被害は多く、対策を専門にする業者がいるほど。ただ、えさを取るための穴とは形状が違い、なぜこのような行動をとるのかはわかっていない」と話す。今後、地方部では人口減少に伴い、空き家などが増え、被害の顕著化が予想できることから、忍び寄るキツツキ被害に警鐘を鳴らしている。

 

拝殿が納められた覆屋の内部。板壁に開けられた無数のキツツキ穴から外光が差し込む

覆屋の壁に約450個もの穴

 被害に遭っている神社は、周辺の3集落でまつっており、スギ、ヒノキを中心とした森の中に建つ。

 無数の穴が開いているのは、拝殿を保護するため、その周囲を囲うようにして建てられた覆屋の壁面に見られる。壁は厚さ約1センチの杉板でできており、板と板の合わせ目を狙うかっこうで穴を開けている。

 特に正面向かって左右の壁面の被害がすさまじく、穴の数は左側が約220個、右側が約200個で、背面にも30個、正面にも5個確認できる。

 神社のそばで暮らしている男性(80)によると、物心ついたころにはすでに今の状態だったという。「最近開けた穴はないのでは。穴が開いたところで拝殿には今のところなんら影響がないようなので、特に気にはしていない」。

 地元の自治会長の男性(68)は、「平成22年に行った覆屋の屋根改修工事のときに、『穴だらけの壁面もやり直そうか』と話にあがったが、『珍しい風景やし、お金もかかるので、そのままにしておこう』と決着した」と言い、今後も静観の構えという。

 

クリの枯れ木に飛来したアカゲラ

穴を開ける目的不明、別荘地で被害も

 市内では、同神社ほど大規模ではないが、山際や山中の社寺、別荘などでも同様の被害が見られる。

 春日神社のケースを知った市は、「初めてこのような現象を見た。これまでに市民からキツツキ被害の相談を受けたことはないが、文化財指定の建物に被害が及び、市民からの要望があった場合は、何らかの対策を講じなくては」としている。

 布野研究員は、「穴をあけた理由は、巣穴をつくるためとか、えさをとるためなどと言われているが、いずれも憶測の域を出ない」といい、「穴の形状が、えさをとるためのそれとは明らかに違っている。一方、巣穴の形には似るが、なぜ同じ場所にこんなにも数多くの試し掘りのようなことをするのかは不明だ」と話す。

 キツツキのこの行動を解明できていない以上、効果的な対策が立てられていないのが現状だが、キツツキ被害の“先進地”である八ヶ岳山麓や軽井沢の別荘地では、目立たない色や太さのネットをキツツキ被害が集中する家屋の上部に張り巡らせるなどして防除対策を行っている。