生命現象を遺伝学で
国立遺伝学研究所教授 山尾 文明 (やまお ふみあき) さん (静岡県三島市在住)
1948年 (昭和23年) 篠山市生まれ。 篠山鳳鳴高校、 京都大学理学部生物物理学科卒。 同大学院修士・博士課程修了。 アメリカイエール大学研究員、 名古屋大助手を経て、 03年から現職。
国内の大学の共同研究利用機関である国立遺伝学研究所で、 「ユビキチン」 という物質の働きと、 生命現象の関係を遺伝学的手法で研究している。
「ユビキチンは、 人間や動物の細胞内で様々な機能を遂行するタンパク質と結合し、 それを分解し、 抑制する物質というのが一般的な認識になっています。 なかでもタンパク質を壊すという機能に着目しました」 と研究のきっかけを話す。 「10数年前に私が研究を始めたころは、 タンパク質を作る研究が主流で、 壊す機能について研究する人は、 ほとんどいませんでした」 という。
「タンパク質を壊す働きを活用すると、 たとえば、 がん細胞の分裂を抑制し、 壊す役割も期待できます。 がんのほかアルツハイマーなど病気の治療や予防にも役立つのではないでしょうか」 と話す。
「細胞の生産がアクセルなら、 壊し、 分裂させる機能はブレーキの役割」 と説明する。
「名大の助手をしていたころに師事していた教授の 『人のすることを真似するな』 という言葉が、 私の研究の原点。 誰もやっていない未知の分野に挑戦し、 解明できたときが喜び」。
その一方で、 「若い研究者が経済的に恵まれず研究を断念していくのを見てきました。 安心して研究に打ち込める環境が海外に比べ日本ではまだ不十分」 と指摘する。 大学時代は、 学生紛争の最中。 「講義はなく、 自主学習で仲間と語り合いました。 その経験から、 自ら意欲的に研究する姿勢が育ったのかもしれません。 好きな研究が続けられて幸せ」 と感謝する。
「大学受験浪人をしていた時に、 予備校の寮に手紙をくれた高校時代の担任、 植田憲雄先生 (元柏原高校長) やクラスメートのことを思い出します。 若いころはそう思わなかったふるさとが懐かしくなりました」。 ストレス解消は水泳。 「マスターズ大会にも出場しています」
(臼井 学)