丹波の森協会が先ごろ発行した「昔話集」第六集に収録された「天神の森のおはなし」がおもしろかった。

2006.12.27
丹波春秋

丹波の森協会が先ごろ発行した「昔話集」第六集に収録された「天神の森のおはなし」がおもしろかった。鎮守の森に住むいたずら好きのタヌキをかわいがる村人たち。鎮守の森を飛び回る小鳥と、境内で遊ぶ子どもたち。そんな交流が描かれた話だ。▼この話の注釈に、「鎮守の森は、村人の心のよりどころであり、子どもたちの遊び場として、動物たちと共生した場所でした」とある。子ども時代、たまに鎮守の森で遊んだ。基地を作り、木の枝を刀代わりにチャンバラをしたものだ。しかし、子ども心に何となく鎮守の森に霊性を感じた。▼梅原猛氏は、「日本の神社には必ず森がある。われわれは子どものときから神社といえば森を連想して育ちました」と書いている。神社といえば森。それは、森そのものが神様だったからだ。神殿や拝殿が造られるようになったのは、7世紀ごろのこと。仏教が伝来し、寺院が造られた影響だったという。▼森を神様とし、森に住むシカやキツネ、ヘビ、サルも神の使いとしてあがめた。それもこれも日本の神道は本来、自然崇拝の宗教であり、森の宗教だったからだ。▼自然破壊が深刻化するなか、その解決のヒントになる宗教観だが、開発などの理由で無残な姿になった鎮守の森を丹波地方でも見かける。神様はさぞお嘆きに違いない。(Y)

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