高齢者特別賞を受賞した中井豊次さんを取材した。90歳以上で社会的に貢献した、と県が認めた人に贈られる賞で、長年携わってきた有機農法の指導が評価されたものだ。賞状を手にした中井さんに受賞の感想を聞くと、子どものように照れながら「うれしいです」と答える中井さんに、思わずこちらの顔もほころんだ。 しかし、話が有機農法になると中井さんは真剣な顔つきになった。1977年に市島OB大学の講師を引き受けた時から、「体に優しい農作物を」との一念で研究を開始。まず自分の田畑で肥料などの効果を確かめるという徹底した現場主義を貫いた。一番感心したのは「害虫にはアセビなどの葉を煎じたものをやる」といった昔からの言い伝えをヒントにして有機農法を研究した、ということだった。有機農法といえば化学の専門用語が飛び交う、やや難解なもの、というイメージを持っていたので、それは新鮮な驚きだった。 取材の最後で「この仕事だけは結論が出せない」と言われていたのが印象的だった。学ぶことに限りはないということだろうか。人生の先輩に教わることは多く、実りある一日だった。(西澤健太郎)