喫茶店にて

2007.01.30
未―コラム記者ノート

 先日、篠山市内の国道176号沿いで約30年間店を開いている喫茶店を取材した際、ご主人がおっしゃった「30年あれば、いろいろな現象にみまわれますよ」という言葉が印象に残った。 このお店のお客は、元来、丹波を訪れる観光客が多かった。しかし近年、▽高速道路の開通で、国道を通らず丹波入りする人が増えたこと▽周辺に新たな観光地や施設ができ、観光ルートが変わったこと-などで、観光の行き帰りに利用する人が大きく減った。また、リストラに取り組む各企業が事業所の統廃合を進めたことで、仕事の合間に立ち寄っていた営業マンも少なくなったという。 道路整備の進展、構造改革時代の到来-。店の客層を変化させてきた「いろいろな現象」は、30年間の社会の移り変わりを映し出していた。 神戸在住だったご主人がこの場所に開店したきっかけは、父親が篠山にほれ込んだことだったそうだ。その自然が育んだ地下水を使っていることが店のうりだが、こちらは30年間一度も枯れず、水質も安定しているという。激しく動く社会と、変わらない自然。国道沿いの喫茶店に、そんな対比があった。(古西広祐)

関連記事