「灰小屋」とは、戦後化学肥料がなかったころに、灰の肥料作りをした小屋。瓦や石で積み上げられ、わらを混ぜた土で三方を囲むように立ち上げている。小屋の中で土、枝、わら、落ち葉などを何層にも重ね、燃やした灰をふるいにかけ、肥料としてまいた。現在、ほとんどが物置小屋と化しているという。篠山市左官技術研究会の南俊行会長は、左官業界誌の編集長や風景写真家から、灰小屋がこれだけ現存しているのは篠山だけと聞いた。南さんは灰小屋の場所、寸法、構造、材質などについて、今まで80カ所を調査した。篠山全体で200カ所はあると推測している。左官職人は、地元の土を使った壁作りに生かし、写真家は、灰小屋のある風景にひかれ、シャッターを押し続ける。丹波の森大学では、新エネルギーという視点から灰小屋を研究し始めた。整備中の県立丹波並木道中央公園では、住民が気軽に参加できるプログラムとして灰小屋作りが計画されている。 一つの灰小屋がいろんな視点から見直され始めている。新たな地域の資産として活用の幅が広がっていくことを期待する。(坂井謙介)