無言館

2007.01.30
未―コラム記者ノート

 植野記念美術館で現在、「無言館 遺された絵画展」が開催中である。戦争で亡くなった画学生達の遺作を展示するこの展覧会を、先日機会があって取材することができた。そこで、生まれて初めて絵の前で目頭が熱くなるという経験をした。 「出展者」の多くは私と同年代の20歳代か、30歳代でその生涯を終えている。出征直前までカンバスに向かい続けた者、子供の顔を写真でしか知らぬまま戦死した者、立場や思いはそれぞれだが、彼らに共通しているのは、芸術に対する情熱である。ただ純粋に、一つでも多くの絵を描きたい、という思いに胸が熱くなり、同時にやりきれない悲しさに包まれてしまう。そして描かれているのは家族の肖像や故郷の風景が多く、彼らがいかに自分達の身近なものを愛していたかが伝わってくる。 もちろん中には稚拙な感じのする絵もある。しかしそれが余計に彼らが若くして命を散らせた、という事実を強調しているようで、見ていると切なくなってしまった。 この展覧会は、多くの人に見て欲しい。彼らの声なき声、そして自分の中から湧き上がってくる声に耳を傾けて下さい。(西澤健太郎)

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