球団名の売却

2007.01.31
未―コラム記者ノート

 たとえ赤字を解消できても、「名前」が変わっては本末転倒ではないか-。プロ野球の近鉄球団が打ち出した「球団名の売却」を聞いたとき、そう感じた。 自分自身、パ・リーグチームの観客の不入りは球場で実感している。経営の苦しい球団が、あの手この手で改善を図るのは「企業努力」と評価されるべきだろう。しかし今回は、「一線」を超えていた。 ファンにとってバファローズの「近鉄」は、鉄道会社を示す記号ではなく、喜怒哀楽さまざまな思いを共有してきたチームの名前だ。大げさに言えば、家族や恋人への思いと近い感情を抱かせる響きなのである。 プロ野球は、基本的に観客の存在によって成り立っている。大切な『お客』であるファンの不安を無視した増収策は、長期的に見ればマイナスに作用する可能性が高いだろう。他チームの拒否反応は十分に予想できた。 不況と構造改革のうねりのなかで、企業や自治体は、収入の増加と経費削減を迫られている。それらを進める上で、「自分たちが誰のために成り立っているのか」の視点は必要だ。近鉄球団にはそれが欠けていた。(古西広祐)

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