4日付の本紙(丹波市版)に、丹波市山南町の前川薬師堂で近く33年ぶりに開扉法要が行われる、との記事が載っていた。33年にたった一度しか、ご開帳をしないというこの信仰は、仏教が日本神道の影響を受けた表れらしい。▼宗教学者の山折哲雄氏によると、日本の神々はもともと森や山などに隠れ、目に見えない存在だった。新しく渡来した仏教はこの洗礼を受け、目に見える仏像を、目に見えない領域に隔離した。それが、ご開帳という秘仏化を生み出したという(『ブッダは、なぜ子を捨てたか』)。▼目に見えないものは、私たちを畏怖させる。畏敬の念を起こさせる。しかし、俗信を排する合理主義が蔓延し過ぎたため、目に見えないものは非科学的な存在として退ける風潮が生まれた。▼たとえば、悪行を働いた者に「ご先祖様が悲しむぞ」と諭しても、どれほどの効力があろうか。先祖は目に見えないのだから、存在していると考えること自体が非合理であり、まして悲しむことなどありえないと片付けられてしまう。▼キリスト教徒が神の前で身を慎むように先祖の前で身を慎む、という宗教心が薄れた。私たちの命は先祖から続く「命の連鎖」の中にあるという考えも薄れ、命を軽視する事件が後を絶たない。33年ぶりに姿を現す仏にこの現世はどう映るのだろうか。 (Y)