丹波新聞に入社し、まだ年数も浅かった20年ほど前のこと。多紀郡内の選挙の取材に行き、たまげる風景に出くわした。出陣式で、第一声をあげた候補者がやおら地面に両膝をつき、支援者の前で深々と土下座したのだ。悲壮感と腰の低さをアピールしているように見えた。▼今でも土下座をする候補者はいるかもしれないが、時代は変わった。篠山市選挙区の県議になった小西氏は、たんば田園交響ホールで行った個人演説会で、退場する際、騎馬戦さながらに数人の若手支援者に支えられ、階段状になった客席の通路を上がっていった。その間、会場では拍手が起き、小西氏は握手攻めにあったという。▼土下座から騎馬へ。時代の空気は明らかに開放的になっている。だからといって、明るく楽しい空気が篠山に満ちているかというと、そうではなかろう。▼市民の間で第2の夕張とさえささやかれる財政問題をはじめ、病院問題、人口減少など、暗雲が浮かんでいる。土下座の時代と比べ、閉塞感は強まっているように思う。解放感と閉塞感という矛盾した空気の共存。それが今の篠山ではないか。▼行政経験がなく、若さがある小西氏が当選したのは、若さを支持する解放感を背景に置き、閉塞感を生み出した旧来の枠に染まっていない未知数の可能性に期待したものと見る。 (Y)