「圏域会議」の話し合いが棚上げに

2007.05.01
丹波の地域医療特集

 丹波圏域の特性に応じた医療体制のあり方や、 病院間の機能分担を検討する 「丹波地域医療確保対策圏域会議」 (議長=山鳥嘉彦・篠山市医師会長) が、 1月以来開催されず、 話し合いが 「棚上げ」 になっている。 兵庫医大篠山、 柏原赤十字両病院の存続問題が決着していないことが要因。 同会議は 「各病院の事情」 を踏まえて進めざるを得ないため、 地域全体の将来像が描けないでいる。 中核を担う県立柏原病院も医師不足が解消できず、 大幅に機能低下している。 経営難で撤退も視野に入れた篠山、 柏原日赤両病院にとって、 議論の延長は経営赤字を拡大させることにつながる。 丹波地域の3病院は、 集約も役割分担もできないままそれぞれが深刻な局面を迎えた。(徳舛純、 芦田安生)

【現実離れの合意方針】
 同会議はこれまでに計3回開催され、 ▽県立柏原に小児、 産科の入院機能を集約▽圏域内で疾病ごとの拠点病院を設け、 医療ネットワークを構築―などの方針が合意されたが、 医大篠山、 柏原日赤の存続が確定しないことに加え、 「中核」 を担うはずの県立柏原の内科医不足が深刻化。 小児・産科も存続危機に陥り、 合意した方針と現実がかけ離れたものになっている。
 調整役を務める丹波県民局柏原健康福祉事務所の清水昌好所長は 「柔軟に考えなければならない状況」 と言い、 同会議の再開については 「2病院存続問題の方向性が見え始めた時点で次回会議を開きたい」 と話す。 篠山、 日赤両病院の存続協議は、 いずれも解決案は出ていない。

【篠山病院存続「建て替え」鍵】
 篠山市は篠山病院を 「必要不可欠な病院」 と位置づけており、 協議内容は 「市が病院存続にいくら出せるのか」 という財政支援問題に絞られている。 今年9月の 「国からの移譲後10年」 が1つのリミット。 1年前に話し合いが本格化し、 結論を急いでいたが、 医大側の要望と市の提案がかい離したまま、 前市長が引退し、 交渉が中断。 新執行部が4月に再開したばかりで、 「5月の本予算には間に合わない」 (金野幸雄副市長) という。
 市は昨年度に2度、 不採算だが必要な部門への 「政策的医療補助金」 の額を上積みし、 「医師確保と救急医療の確保に年1億2000万円」 の案を出したが、 合意に至らなかった。 岩忠昭病院長は 「政策的医療補助金よりもむしろ病院建て替えの担保が問題。 建て替えに十分な補助が得られなければ将来的な運営のめどが立たない」 とする。
 交渉を引き継いだ酒井隆明市長は、 「小児、 産科、 救急を含めた篠山病院の存続」 を公約に掲げており、 さらに金額を上乗せする方向で提案を練り直している。
 岩病院長は 「出した条件が満たされればたぶん残るだろう」 というが、条件のハードルは市にとって低いものではない。 同院長は 「返事を待たされ続けており、 5月議会に方針表明がなければ撤退と考えている」 と話す。

【柏原日赤問題2重の方針待ち】
 地域のニーズを重要視する柏原日赤の粟田正俊事務部長は 「地域の医療体制の方向性が明確にならないと、 柏原日赤の果たすべき役割が見えない」 とし、 まずは県立柏原の位置付け、 役割を早く明確にするべきだと訴える。 さらに同病院は、 圏域会議に加え、 丹波市地域医療協議会における市の方針が定まるのも待つという二重の 「方針待ち」 が続く。
 同協議会で市医師会員が5月から柏原日赤で平日夜間に診療を行なうことが決まったが、 同病院の 「将来」 は議論されず、 「県立柏原病院の充実」 の方向に軸足が置かれている。
 今年1月、 柏原日赤は市に対し、 健診機能を充実させ、 現状の50床規模の病院機能をあわせもつ 「健診センター構想」 を議論のたたき台として提案した。 辻重五郎市長は日赤存続の意向を示しながらも 「(構想は) 現状にそったものではなく、 医師確保にもめどがたっていない。 具体的な内容の提案があれば、 それに沿うよう支援するつもりだ」 と議論がかみ合わず、 踏み込んだ議論に至っていない。
 同協議会は、 市議会特別委員会の調査とも連携しながら5月末をめどに最終の結論を出す予定。 柏原日赤は 「その結論の内容が、 赤十字自身が存続か、 撤退かを判断する基準になるだろう。 それ以上、 協議が長引けば、 もう病院がもたない」 と話している。

 丹波地域医療確保対策圏域会議は 丹波県民局長、 丹波、 篠山両市の市長、 医師会長と、 県立柏原、 柏原日赤、 大塚、 兵庫医大篠山、 岡本、 にしき記念の6病院長らで構成。 昨年9月に設置され、 3月末をめどに報告をまとめることをめざしていた。

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