地域医療フォーラム 上田康夫氏に聞く

2007.05.31
丹波の地域医療特集

 16日に丹波の森公苑で開催の地域医療フォーラム(丹波新聞社主催)で講演する県立柏原病院副院長の上田康夫氏に、どのような講演になるかなどについて聞いた。

―どのような講演内容になるか。
  「丹波地域の2つの病院 (国立時代の篠山病院と県立柏原病院) で20年勤務医として過ごし、 また、 篠山に家族と暮らす市民として病院のありがたさを知っている。 柏原病院の現状を中心に、 全国的な医師不足とそれによる病院機能低下の原因と対策について、 医師の立場から話すことになる」
―勤務した2つの自治体病院の様子は。
  「最初に赴任した国立篠山病院は、 国から民間への移譲問題で揺れた時期。 機器を1つ購入すると雨漏り工事ができないという財政状態で、 院内の予算配分も厳しく、 赤字解消、 患者確保のための涙ぐましい努力が行われていた。 1994年に県立柏原病院へ移った当時は、 医師数も診療科数も圧倒的に多く、 機器購入の制限も緩やかで驚いたものだが、 現在は医師不足と経営赤字で、 篠山病院の10年前と同じような困難に直面している」
―柏原病院では医師が次々と 「立ち去って」 しまったが。
  「昨年あたり、 一緒に苦労してきた医師たちが辞めていくのを見ながら、 自分でもなぜ辞めてはいけないのだろうと自問することが多くなっていた。 特に産科医療の現状には強い危惧を持っており、 自分がどこまで続けられるだろうか、 後継者はあるのかと考えてしまう。 仲間たちの心が折れてしまわないうちにどんな形でもいいから 『医師が納得して働ける』 地域病院のいい方向性が見えてくれば」
―妊婦の体脂肪測定法を研究しているとか。
  「妊婦の栄養を研究しており、 タニタ (体重計メーカー) と共同で新しい妊婦体脂肪測定装置を開発した。 妊婦健診では、 体重管理を指導するが、 体重変化の中身はまだ誰にも正確には分かっていない。 脂肪太りだとカロリー過剰だし、 水太りだとむくんでいることになる。 妊婦の体脂肪を日常診療で測定できれば、 母体の栄養状態や中毒症の予知、 早期診断に大いに役立てることができる。 現在、 イギリスのサザンプトン大学とこの装置を用いた共同研究を行っている」
―市民に一番理解してほしいことは
  「医療をただ国や県や大学におんぶに抱っこしておけばよかった時代は、 とっくに終わっているということに気づく必要がある。 医療提供者も市民も、 各自がこれまでの人生で勉強し身につけてきた知恵を、 新しい医療の枠組み作りに惜しむことなくつぎ込むことが大切だと思う。 地域の将来の運命を握るのは、 この地域で今を生きる私たちなのだから」(徳舛 純)

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