「方言の温かさ」と題した作文が本紙6面に掲載されている。作者は市島中2年の青木翔汰君。「方言にはおもしろみや温かみがあり、その土地の良さがわかるような気がする」と書いているが、まさにその通り。方言はなかなかすぐれた言葉だ。▼たとえば、「雪が降っとる」と「雪が降りよる」。この方言は微妙に使い方が違う。朝起きて外を見ると、夜の間に降った雪が積もり、今はやんでいる。このときは「雪が降っとる」と言う。降雪が進行中の場合は「雪が降りよる」だ。方言は、同じ降雪にしても状態に応じて使い分けができるのに、標準語ではいずれの状態も「雪が降っている」と言う。▼以上は、国語学者の金田一春彦氏の指摘だが、私たちが使っている方言には豊かな表現力があると感心させられる。さらに、方言には変幻自在のおもしろみがある。「ない」という打ち消しの言葉がついているのに、命令形になったりする。▼たとえば「起きない」だ。「はよう起きないな」と言う場合は、「早く起きなさい」という命令の意味になる。丹波弁にくわしい青垣の芦田輝夫氏によると、これは、「さ」抜きという丹波弁の特徴だそうだ。「起きなさい」の「さ」が抜けて、「起きない」になった。▼標準語の「起きない」と意味が大きく異なる方言の「起きない」。これも方言の奥深さだ。(Y)