一人暮らしの若い女性の食生活にたまげたことがある。以前にテレビで放映していたものだ。その女性は料理を一切しない。外食をするか、コンビニで弁当類を買って食べる。お茶もコンビニで買う。台所にあるやかんは、ほこりをかぶっていた。▼この女性が結婚し、子どもができればどうなるか。少しはましになるかもしれないが、長足の進歩はまずなかろう。調理をしない家で、家族という共同体は成り立つのだろうか。▼家族とは本来、家人が寄り添い合う共同体であり、理屈を越えた親密さが何よりもの特質だ。その親密さをつくりだすのが家庭料理だと思う。ネギを刻む音、鍋からわき上がる湯気。調理の進む様子を、五感を通して感じ、ぬくもりを覚える。▼料理をつくってくれる人がいる。それは自分の世話をしてくれる人が存在するということだ。料理をつくってあげる人がいる。それは絆で結ばれた人が自分の身近に存在するということだ。それぞれに存在を確認することで親密な共同体ができあがる。▼ところが、スーパーで総菜を買い、冷凍食品を使うなど、家の料理を外部に委託する傾向が強まってきた。確かに便利だし、重宝するが、行き過ぎると、家族の基盤を揺るがしかねない。今回の冷凍ギョーザの一件は、食生活の外部委託についても問いかけている。(Y)