医大、篠山病院を存続へ 公的支援49億円投入

2008.06.02
丹波の地域医療特集

 兵庫医科大学は、 施設老朽化や赤字、 医師不足などで運営が難しくなっていた同医大篠山病院 (篠山市山内町) について、 「兵庫県、 篠山市との三者協議で、 公的な支援策がある程度整った」 とし、 今後10年間の存続を決定した。 話し合いがまとまっていない土地交換問題が条件に含まれているが、 同医大、 市とも解決に向け前向きな姿勢を示している。 病院建設と医療機器整備、 運営補助の公的資金総額は国、 県、 市で49億2200万円。 市は最大35億8000万円を支援する。
 医大は5月26日の理事会と評議員会で方針を固め、 28日に記者会見を開いて発表した。
 医大は、 現在の病院敷地 (医大所有) と、 新病院の土地 (市所有) の交換を存続条件として提示。 理由について 「今のままでは、 借地で新病院と関連施設を運営し、 隣に大学所有の跡地があるという望ましくない形になる。 跡地に税金や維持費がかかり、 処分も容易ではない」 と説明した。
 また、 市が土地交換に合意していないことについて、 「一方的な病院撤退を危惧しているのであれば、 10年後の取り決め方を協定書に入れておくなどの方法もあるのでは。 誠実に協議を重ねることで解決できると確信している」 と述べた。 また 「存続環境が整えられている限り、 篠山市の地域医療に末永く貢献するよう取り組んでいく」 と述べ、 10年で撤退するつもりはないことを強調した。
 また、 土地交換以外に、 ▽小児、 産科など不採算部門の診療科は、 県主導で近隣地域内病院との役割分担を進め、 各医療機関の負担を軽減する▽篠山市からの補助金は、 施設整備分は事業年度に、 運営補助は協定締結後、 すみやかに支給する―の2項目を付帯条件として挙げた。
 酒井隆明市長は 「地域の医療を守る決定に心から感謝している。 土地交換については、 市民が先々まで安心できる条件を提示してもらえるなら協議に応じたい」 とコメント。 井戸敏三県知事は 「医大が地域医療機関としての篠山病院運営を継続していけるよう、 市ともども、 できるだけの支援をしていく」 とした。
 今後は、 医大が新たな協定書案を出し、 できるだけ早い時期に三者協議を開いて調整するという。 協定書案には、 診療科目や救急医療体制などについて具体的に盛り込まれる見通し。
 篠山病院存続協議は2001年10月、 医大が病院赤字や老朽化問題への支援を市に訴えたことから始まった。 医大は、 07年9月末で 「国から移譲後10年は運営」 という縛りが切れるのを節目に、 撤退の可能性もあると伝えていた。
 市と医大との交渉は難航し、 06年5月に県を含めた三者協議に。 国、 県の支援も盛り込み、 07年10月に担当者レベルでようやく存続に向けた基本協定書案がまとまるも、 医大の学内合意が得られず、 棚上げに。 08年2月、 医大が 「5年以内に他の医療機関に移譲」 または 「存続なら補助金の上積み」 を提示。 再度調整を重ね、 7億円の公的資金上積みで合意した。

【解説】 市民は病院に関心を
 酒井市政が発足当初から抱えていた大きな懸案課題にようやく決着のめどがついた。 前市政時代を含め発端から7年もかかったが、 医大は 「撤退」 から 「存続」 へと逆方向へ方針の舵を切った。 地域医療への医大の使命感と、 市と県の粘りの交渉の成果と思う。
 ただ、 肝心の篠山市と医大との信頼関係づくりはこれからに見える。 土地交換問題では、 お互いを信用しきれていないことが浮き彫りになった。
 市は、 市民の命を預ける中核病院として、 医大と一緒になって守り育てていくことが必要だ。 また公的資金が入る以上、 医大はこれまでとは考え方を変え、 大学病院という高みから降りて、 地域医療と向き合ってもらいたい。 そして、 一番肝心なのは、 市民が病院を 「あって当たり前」 と思わず、 もっと関心を寄せることではないだろうか。(徳舛 純)

 (兵庫医科大学篠山病院) 1997年10月、 国立篠山病院から経営移譲を受けて開設。 関連施設としてリハビリテーションセンターと老人保健施設も隣接地にある。 病院の病床数は一般150、 療養50。 常勤医師22人、 全職員185人。 08年3月までの累積赤字額は9億8800万円。

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