丹波市市島町鴨庄地区の妙高山で見つかった希少植物、 クリンソウの群生地の約7割が無残に荒らされていることが5月11日、 分かった。 群生地は、 一昨年の5月、 地元の山野草愛好家の女性2人が見つけていたもので、 一般公開に向けて準備を進め、 19日午前9時から同地区コミュニティーセンター (同町喜多) で 「妙高山のクリンソウを守る会」 の設立総会と現地説明会を行おうとしていた矢先だった。 人が折り取ったように見えることから、 守る会の設立発起人たちは、 「いたずらなら、 どんなつもりでやったのか。 これからみんなで守っていこうとしていた時だけに、 悔しい」 と肩を落とし、 今後の対応を協議している。
同山の中腹にある、 林道沿いに流れる沢の両側、 300メートルほどの間の斜面に、 5カ所ほどの塊をつくり、 密度を変えながら群生しており、 ちょうど満開を迎えている。
11日の朝、 群生地を知る地域住民が、 写真を撮ろうとした際、 異変に気付き、 「守る会」 設立に向けて中心的に動いている発起人に連絡を入れた。 発起人らはちょうどこの日、 公開に向けて観察マナーの注意を喚起する看板を立てる準備をしようとしていたところで、 慌てて現地へ確認に行った。
被害にあったクリンソウは、 いずれも花から5センチほど下が折り取られており、 根から掘り起こしたり、 株を踏みにじったような跡はない。 発起人らは人の仕業とみている。 確認時は、 折り取られた花びらがまだ、 みずみずしさを残していたことから犯行からあまり時間がたっていなかった模様。
発起人の1人、 高見豊さん (65) =同町上牧=は、 「折り取った後の株に丁寧に供えるように置かれているものもある。 動物の仕業ならもっと葉や茎を踏みにじったような跡があるはず」 と話す。 同じく発起人で、 丹波自然友の会員の吉住成徳さん (72) =同=は、 「公開すれば、 ある程度は覚悟していたが、 これからという時に、 ここまで荒らされるとは」 と残念がる。
発見者は、 吉見信子さん (62) =同町南=と、 樋口加代子さん (58) =同町喜多。 2人で趣味の山散策を楽しむうちに数本のクリンソウと出会い、 歩みを進めるうちに目の前に突然、 群生地が広がっていたという。
以来、 発見者や地域の愛好家、 自治振興会で相談し、 群生地を隠すよりも、 公開して保護を訴え、 乱獲防止につなげようと判断。 現地が国有林であるため、 観察道を整備したり、 環境保護とマナーの厳守を訴える看板を設置する許可を国や県から得るための手続きや、 「守る会」 の設立準備を進めてきた。 今後、 徐々に観察ルートの整備などを進めながら定期的な観察や環境保護に努める予定だった。
【クリンソウ】山地の湿地に生えるサクラソウ科の多年草で、 県版レッドデータブックBランクに指定されている希少植物。 5―6月に大きな根性葉から高さ30―50センチほどの花茎を出し、 約2・5センチの紅紫色の花を数層に輪生して咲かせる様子が、 五重塔の九輪に似ていることから、 この名がついた。 篠山市の多紀連山では2007年6月、 約4100平方メートルにも及ぶ大群落が発見され、 「多紀連山のクリンソウを守る会」 が設立されている。